生物は環境の変化を検知し、その環境に合わせて自身の代謝を調節する。バクテリア・カビ・植物においては、ヒスチジンキナーゼと呼ばれるセンサーキナーゼにより、細胞内外の環境の変化を検知する仕組みがある。ヒスチジンキナーゼの遺伝子破壊・過剰発現により、どの様に刺激でどういった遺伝子群が制御を受けるかについての情報は、かなり蓄積してきたが。センサー分子がどの様な分子機構で環境の変化を検知するかについては、これまで十分理解されているとは言えない。そこで、本研究ではこれまでに詳細に機能を解析したリン酸欠乏に応答するセンサーSphSのキナーゼドメインに、機能未同定のヒスチジンキナーゼのシグナル検知ドメインを融合したキメラ型のセンサーを合成し、SphSを欠失した細胞で発現した。キメラ型センサーが活性型であれば、SphSが本来発現を制御するアルカリフォスファターゼの活性が発現し、不活性になれば、アルカリフォスファターゼの活性は発現しない。この仕組みを活用して、キメラ型センサーのシグナル検知部位に様々な変異を導入することにより、シグナルの検知に重要な部位を明らかにすることができる。これまでに全てのラン藻に広く保存されたHik33とHik2のキメラセンサーを使って、Hik33のHAMPドメインとPASドメインが活性の制御に関わること、膜貫通ドメインは必要であるがその配列や数は関係ないことを見出した。また、ラン藻に広く保存されている、必須なヒスチジンキナーゼのひとつであるHik2は、そのGAFドメインで塩ストレス、特に塩化物イオンに特異的に作用することを明らかにした。この成果は、FEMS Microbial Lett.に掲載された。
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