研究概要 |
平成25年度は二成分制御系のレスポンスレギュレーターであるOmpR familyに属する転写因子に関して、大腸菌スクリーニング系を用いてチオレドキシンとの相互作用の有無を検討した。Synechocystis sp. PCC 6803ゲノム上にコードされる10種のOmpR familyの転写因子に関して相互作用を調べたところRpaA, RpaB, ManRの3種の転写因子のみ特異的にチオレドキシンとの相互作用が検出された。OmpR型転写因子のレシーバードメインには、ヒスチジンキナーゼからリン酸基転移を受けるアスパラギン酸の近くに、バクテリア間で共通して保存されたシステイン残基が1個存在する。レシーバードメイン内に共通してシステイン残基を持つにも関わらず、それがチオレドキシンターゲットとして働く場合と働かない場合があることが明らかとなり、このスクリーニング系の高い特異性を示す結果となった。 RpaAとRpaBに関して、組み換えタンパク質を精製し、チオール基修飾試薬PEGマレイミドを用いてシステイン残基の酸化還元状態を調べたところ、精製チオレドキシンを添加した場合に、両転写因子のシステイン残基が還元されることを見出した。この結果は、両転写因子が、実際にチオレドキシンと相互作用することを強く示唆するものである。RpaAは塩・浸透圧ストレス応答や強光順化に関わること、RpaBは光合成系の強光応答に関わること、ManRはマンガントランスポーター遺伝子の発現制御に関わることが知られているが、いずれの転写因子も本研究によってチオレドキシンとの相互作用によるレドックス制御を受ける可能性が初めて示された。
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