研究概要 |
植物の細胞壁は主にセルロースと各種の多糖(ペクチン、ヘミセルロース)ならびにアラビノガラクタン-プロテイン(AGP)と呼ばれる糖タンパク質で構成される。本研究ではAGPの糖鎖に着目し、糖鎖を特異的に分解する酵素の探索、酵素遺伝子のクローニング、酵素によるAGP糖鎖の断片化と構造解析、得られたオリゴ糖の生理機能解析を目指す。 申請者達は、微生物起源の酵素を検索・精製して、AGP糖鎖の特異的分解酵素(特定の糖鎖配列を認識して分解する酵素)を見出した。このうち、エキソ-β-1,3-ガラクタナーゼとエンド-β-1,6-ガラクタナーゼは新規な酵素であり、EC numberが付与されている。本申請課題では、さらなるAGPの糖鎖分解酵素の検索と精製を目指す。具体的には、エンド-β-1,3-ガラクタナーゼとエキソ-β-1,6-ガラクタナーゼに着目する。これら酵素を用いた糖鎖の断片化と構造解明を進める。得られたオリゴ糖の生理機能解明を試みる。これらの実験ステップによってAGPの糖鎖構造・機能相関に関する知見の進展を図る。 平成23年度はエンド-β-1,3-ガラクタナーゼの探索を行い、エノキタケ培養液に酵素活性を見出した。培養液からイオン交換クロマトグラフィーとゲルろ過クロマトグラフィーにより酵素を精製した。精製酵素の相対分子量は30 kDa だった。精製酵素のN末アミノ酸配列を調べ、その配列をもとにエノキタケcDNAデーターベースを利用して全長cDNAを単離した。cDNAを発現ベクターに組込み、ピキア酵母を用いて組換え酵素を作製した。様々な多糖類を用いて酵素の基質特異性を調べたところ、ネイティブ酵素、組換え酵素いずれもβ-1,3-ガラクタンに最も活性を示した。これらの成果を専門誌(Journal of Biological Chemistry, 286巻, 2011年)に発表した。
|