研究概要 |
植物の細胞壁は主にセルロースと各種の多糖(ペクチン、ヘミセルロース)ならびにアラビノガラクタン-プロテイン(AGP)と呼ばれる糖タンパク質で構成される。本研究ではAGPの糖鎖に着目し、糖鎖を特異的に分解する酵素の探索、酵素遺伝子のクローニング、酵素によるAGP糖鎖の断片化と構造解析、得られたオリゴ糖の生理機能解析を目指す。申請者達はAGP糖鎖の特異的分解酵素(特定の糖鎖配列を認識して分解する酵素)として、既にエキソ-β-1,3-ガラクタナーゼとエンド-β-1,6-ガラクタナーゼを見出している。 平成23年度はエンド-β-1,3-ガラクタナーゼの探索を行い、エノキタケ培養液から各種クロマトグラフィーで酵素を精製した。精製酵素のN末アミノ酸配列を調べ、その配列をもとにエノキタケcDNAデーターベースを利用して全長cDNAを単離した。精製酵素の基質特異性などの性質を調べ、その成果を専門誌(Kotake et al., Journal of Biological Chemistry, 286巻, 2011年)に発表した。 平成24年度はAGP糖鎖の特異的分解酵素として、今までに知られていないエキソ-β-1,6-ガラクタナーゼを見出すために各種微生物培養液を用いてその酵素活性を探索した。現在までのところ良好な結果は得られず、活性測定系の再検討などが必要と考えている。さらに、ケンブリッジ大学のDupree教授と共同で、今までに見出した各種AGP分解酵素を用いてアラビドプシス葉のAGPの断片化とその構造解析を行った。得られたオリゴ糖の構造を調べAGP糖鎖の構造モデルを構築した。本成果を専門誌(Tryfona et al., Plant Physiology, 160巻, 2012年)に発表した。本研究によってアラビドプシスAGPの生理機能解明がさらに進展すると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度はエンド-β-1,3-ガラクタナーゼの精製を行った。実施計画では平成24年度に予定していたが平成23年度内に目的酵素をコードしている遺伝子のクローニングが終了した。平成24年度は本課題で得られた組換えエンド-β-1,3-ガラクタナーゼと他のAGP分解酵素と組み合わせて、ケンブリッジ大学のDupree教授と共同でアラビドプシス葉のAGPの特異的断片化とAGP糖鎖構造モデルの構築を行った。本課題は平成23、24年度の2年間を予定していたので、研究実施計画より早く研究を進めることができた。平成23、24年度の研究成果は論文発表出来たので満足のいく研究達成度であると自己評価している。しかしながら、平成24年度の目標の一つであったエキソ-β-1,6-ガラクタナーゼの探索は良好な結果が得られなかった。本課題については平成25年度も引き続き酵素の探索を継続する。
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