研究代表者らは、シロイヌナズナの雌性配偶体形成時の極核融合に、小胞体の分子シャペロンHsp70であるBiPの機能が必要であることを見いだした。本研究課題では、BiPを足がかりに、極核融合の分子機構の解明を目指している。昨年度までに、BiPは異なるセットの小胞体Jタンパク質(制御因子)とともに、極核融合において核外膜と核内膜という2回の膜融合に機能すること、核外膜融合欠損を示す雌性配偶体は受精時の極核と精核の融合にも欠損を示し、これが受精後の胚乳核分裂異常を引き起こすことをライブイメージング解析によって明らかにした。本年度はライブイメージング解析を引き続き進め、胚乳核分裂の異常は、受精時の胚乳における精核の脱凝縮の欠損によることを明らかにした。この成果は、現在論文として投稿中である。 本研究計画では、BiPのシャペロン反応のクライアントとして極核融合で機能する因子の探索も行った。昨年度までに、GFPを用いて極核を可視化するシロイヌナズナラインを構築し、これを用いて極核融合欠損を示す変異株のスクリーニングの準備を行った。本年度よりスクリーニングを開始したが、期待される表現型を示す変異株は得られていない。また、酵母2ハイブリッド法を用いたスクリーニングも進めているが、候補はまだ得られていない。近年、いくつかの生物種の核融合過程で核融合過程で機能する因子が報告されていることから、そのシロイヌナズナホモログの変異株の解析も進めた。この結果、これらの中に極核融合過程で機能するものがあることを示唆する結果が得られた。今後は、極核融合におけるこれら因子の関与を確認するとともに、これら因子がBiPのシャペロン反応のクライアントとなっている可能性についても検討する計画である。
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