研究課題
マメ科植物に共生した根粒菌の窒素固定能力を制御する宿主植物遺伝子を解明するために、これまでに作出されたマメ科のモデル植物ミヤコグサの新規と予想された6系統のFix-変異体、F04、F34、F39、F51、F62、F156変異体の原因遺伝子の同定、発現解析、機能解析、表現型解析に取り組んだ。その結果、それぞれの変異体について、以下の点が明らかになった。1.F04変異体の原因遺伝子は、ポジショナルクローニングによって同定され、野生型遺伝子の導入による変異体の相補が確認された。F04変異体の根粒細胞の微細構造を電子顕微鏡で観察したところ、根粒菌の共生が確認されたが、早期老化の徴候が観察された。また、F04遺伝子は、植物の全身で発現し、根と根粒の維管束で発現することが明らかになった。2.F34変異体の原因遺伝子のマッピングでは、約1,000個体のF2劣性ホモ個体の分析を終了した。その結果、原因遺伝子を約200kbの領域に絞り込むことができた。3.F39変異体の原因遺伝子のマッピングでは、約1,000個体のF2劣性ホモ個体の分析を終了し、原因遺伝子の候補となる遺伝子を同定した。そこで、野生型遺伝子をF39変異体に導入し、変異が相補するかどうかを検討しているが、現在のところ、相補が確認できていない。4.F51変異体の原因遺伝子のマッピングでは、約600個体のF2劣性ホモ個体の分析を終了した。その結果、2つのDNAマーカーが0cMに位置することが明らかになった。5.F62変異体の原因遺伝子のマッピングでは、約600個体のF2劣性ホモ個体の分析を終了した。その結果、原因遺伝子は、0.47cMの間に位置することが示された。6.F156変異体の原因遺伝子のマッピングでは、約100個体のF2劣性ホモ個体の分析を終了した。その結果、1つのDNAマーカーが0cMに位置することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
原因遺伝子が同定されている1つの変異体では、予定通り発現解析の結果が得られた。また、原因遺伝子が同定されていない5つの変異体のうち、1つは候補となる原因遺伝子が同定され、1つはマッピングがほぼ終了した。さらに、残りの3つのうちの2つは目標とする約1,000個体の分析の半分を終了した。したがって、マッピングは、予定通り進展していると判断される。しかし、原因遺伝子が同定された1つの変異体の相補実験では、繰り返し方法に検討を加えたが、予想される結果を得ることができなかった。
引き続き、それぞれの変異体の到達状況に応じて、原因遺伝子の同定、発現解析、機能解析、表現型解析に取り組む。かずさDNA研究所が行っているミヤコグサのゲノム解析に大幅な進展が見込まれることから、次年度以降、原因遺伝子の同定に期待が持たれる。
原因遺伝子の同定、発現解析、機能解析、表現型解析を実施するために必要な試薬(DNAポリメラーゼ、シークエンス用試薬、リアルタイムPCR用試薬、組み換えDNA用試薬、電子顕微鏡用試薬など)、器具(プラスチックシャーレ、チップ、マイクロチューブなど)、資材(バーミキュラートなど)に用いる。
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Plant and Cell Physiology
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doi:10.1093/pcp/pcr167
植物の生長調節
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