研究課題
マメ科植物に共生した根粒菌の窒素固定能力を制御する宿主植物遺伝子を解明するために、今年度は、ミヤコグサFix-変異体Ljsyp71 (F04)の原因遺伝子の機能解析、新規と予想された3系統のミヤコグサFix-変異体F34、F39、F62変異体における原因遺伝子の同定に取り組んだ。その結果、それぞれの変異体について、以下の点が明らかになった。1.Ljsyp71 (F04)変異体の原因遺伝子は、小胞を介した物質輸送に関与するSNAREタンパク質の一種をコードする。また、原因遺伝子は、植物の全身で発現し、根と根粒の維管束で発現する。そこで、野生型とLjsyp71変異体との間で相互接ぎ木実験を行った。その結果、変異体の地上部に野生型を接ぎ木することで、変異体の変異形質が部分的に回復することが明らかになった。2.F34変異体の原因遺伝子を同定するために、絞り込まれた約200kbの中にさらに新たなマーカーを作成し連鎖解析を行った。その結果、原因遺伝子を約60kbの領域に絞り込むことができた。しかしながら、この領域に予測されたすべての遺伝子の塩基配列を野生型と変異体で比較したが、変異した遺伝子を見出すことはできなかった。3.F39変異体の原因遺伝子の候補となる遺伝子は同定されている。しかしながら、相補実験に成功していない。そこで、プロモーター領域のサイズを変更する、ゲノムDNAあるいはcDNAを用いるなど、様々な条件で相補実験を行ったが、相補を確認することはできなかった。4.F62変異体の原因遺伝子のマッピングでは、733個体のF2劣性ホモ個体の分析を終了した。その結果、原因遺伝子は、ゲノム塩基配列が未決定の領域を含む少なくとも約200kbの領域に位置することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
原因遺伝子が同定されたLjsyp71変異体では、野生型を変異体に接ぎ木することで、変異体の変異形質が部分的に回復するという興味深い現象が見出された。さらに、F34変異体では、原因遺伝子を約60kbの領域にまで絞り込むことができた。さらに、F62変異体のマッピングでは、ゲノムの塩基配列が未決定の領域が存在するものの、原因遺伝子を少なくとも約200kbの領域にまで絞り込むことができた。したがって、研究は順調に進んでいると判断される。しかし、F34変異体の原因遺伝子の候補となる遺伝子をその領域に見出すことはできなかった。また、F39変異体では、原因遺伝子の候補が同定されているが、昨年度に引き続き相補実験が成功せず、確証を得るに至っていないなど、予定通りに進展しなかった点もあった。
F34変異体では、予測された遺伝子の発現解析等を行い、別の角度から原因遺伝子の同定に迫る方策を考える必要がある。また、F39変異体では、ユビキチンプロモーターに変更して、再度相補実験に取り組む、あるいは、候補となる原因遺伝子をRNA干渉法によって抑制することで表現型を解析するなど、新たな手法を用いて原因遺伝子の証明を行う必要がある。
該当なし
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Plant Physiol
巻: 160 ページ: 897-905
10.1104/pp.112.200782