5-アミノレブリン酸(ALA)は微生物から植物,動物までおよそ全ての生物の一次代謝物質であり,ヘム,シロヘム,クロロフィルとなって酸化酵素や光受容体,窒素・硫黄代謝酵素の活性中心として細胞内各所で重要な機能を果たしている。植物でALAは葉緑体内で合成されるが,これを細胞外から投与すると、低濃度でもクロロフィルやヘムが増加し,光合成活性や窒素代謝などが昂進する。さらに高濃度で投与すると、塩ストレス等への環境ストレス耐性が向上する。そこで本年度は,こうした生理効果を最大限引き出して産業活用を促進するために重要な情報である,外から与えたALAの細胞内や葉緑体内への取り込み系(輸送体)の探索を行った。ALAは肝臓賦活剤として30年以上前に医薬登録済みであり,動物細胞でその輸送体がすでにいくつか報告されている。我々はシロイヌナズナでそのホモローグを含む20以上の遺伝子を候補としてピックアップし,それらのT-DNA挿入変異株についてALA感受性の変化を調べた。その結果,4つの遺伝子の欠損株で同時に高濃度ALAと高照度条件にした際の生育不良や白化が抑制されることを見出した。また農業の現場ではこうした物質を単剤使用することはなく,他の物質と併用することで最大効果を引き出すのが普通である。ALAは高濃度で与えるほど負の効果も表れてくるため,これを緩和,消去できる物質の探索を進めた。そのためには実験室条件で迅速,簡便,高精度に多検体を省スペースで検証できる系の開発が必要だったので併せて進めた。そして,ALAと併用することで相乗効果が見られる物質を少なくともひとつ見出すとともに,先述の条件を満たし,かつ添加物質の交換,濃度も正確にコントロールできるユニークな検証(栽培)系を開発することができた。
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