研究課題
被子植物は、雌蕊に運ばれてくる様々な花粉の中から適切な交配相手を選択する機構を発達させている。アブラナ科植物では、雌蕊先端に異種の花粉や、同種の自家花粉が受粉した場合には、花粉の発芽・花粉管伸張が阻害されて受精に至らない。これに対して、同種他家の花粉が受粉した場合には、花粉は発芽し、花粉管は雌蕊を伸長し、胚珠に到達して受精に至る。申請者はこれまでに、アブラナ科植物の花粉が、同種の雌蕊に対してその花粉の受容に必要な一連の生理反応を誘導する何らかの因子(「和合シグナル」と呼ぶ)を保持している可能性を見いだしてきた。本申請の目的は、1)和合シグナルの実体解明と、2)和合シグナルにより雌蕊乳頭細胞で誘導される情報伝達系の解明を進めることである。本申請の研究期間中に、1)については「和合シグナル」の花粉からの抽出方法を確立し、カルシウムグリーンアッセイ系により活性のある画分を得ることに成功した。今後この画分の性状解析と、葯タペート組織のトランスクリプトーム解析により「和合シグナル」の実体が解明されると考えている。2)については、「和合シグナル」により乳頭細胞からカルシウムイオンがエクスポートされることをバイオアッセイ系により見いだし、トランスクリプトーム解析により、それに関わるカルシウム輸送体としてAutoinhibited Ca2+-ATPase 13(ACA13)を同定した。この分子の遺伝子破壊株では、稔性の低下、花粉発芽遅延、カルシウム輸送活性の低下が見られ、遺伝子相補実験によりそれらの表現型は回復した。ライブセルイメージングと免疫電顕では、花粉発芽時に花粉管近傍の乳頭細胞膜にACA13が集積することが観察された。和合受粉時にはベシクル輸送に関わる遺伝子群も発現上昇したことから、今後これらの分子の和合シグナル情報伝達系への関与を調べていくことが必要であると考えている。
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Plant Cell
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