研究課題/領域番号 |
23570057
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
冨永 るみ 宮崎大学, IR推進機構, 助教 (20373334)
|
キーワード | 植物 / 発現制御 / バイオテクノロジー / 発生・分化 |
研究概要 |
本研究は、植物の表皮細胞分化制御機構を、転写因子の機能解析を中心に明らかにしようとするものである。シロイヌナズナの根毛、トライコーム形成を制御するCPCファミリー遺伝子が、どのような働きによって形態形成を調節しているのか、その機構の解明を目指す。また、栽培植物への応用を目指し、トマトでのCPCファミリー遺伝子の機能及びオーソログの機能解析を行う。実施した研究は以下のとおりである。 1、CPCの細胞間移行に必須なアミノ酸残基の決定。 シロイヌナズナの根毛形成を誘導するMYB遺伝子CPCには4つのホモログがあり、リダンダントな機能を持つ。しかし、非根毛細胞から根毛細胞へ移行して働くCPCと異なり、他の4つのホモログは移行しないことを申請者はこれまでの実験により明らかにした(未発表)。そこで、CPCとホモロジーの高いETC1のアミノ酸配列を比較し、一部を入れ換えたコンストラクトを作製、シロイヌナズナに形質転換した。 2、移行に必須なS1配列中の、重要な残基の特定。 CPCの細胞間移行配列S1モチーフを欠損させると、CPCは細胞間移行できなくなる(Kurata, Tominaga et al., Development 2005)。そこで、S1モチーフの9アミノ酸をETC1に付加したCPC::S1:ETC1:GFPコンストラクトを作成し、シロイヌナズナに形質転換した。 3、トマトのCPCオーソログ遺伝子の機能解析。CPCファミリー遺伝子に配列の似た、トマトのオーソログ遺伝子の候補をピックアップし(SlTRYと命名)、配列を手掛かりに、マイクロトムのcDNAライブラリーから増幅し、バイナリーベクターであるpCHF3プラスミドの35Sプロモーターの下流にクローニングした。このトマトSlTRY遺伝子を過剰発現させたシロイヌナズナ形質転換体を作成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、CPCの細胞間移行に必須なアミノ酸残基の決定に関する4種類の形質転換体の作成が順調に進んでいる。また、移行に必須なS1配列中の重要な残基の特定のためのコンストラクトについても、S1モチーフを付加したCPC::S1:ETC1:GFPコンストラクトを作成し、シロイヌナズナに導入した。トマトのCPCオーソログ遺伝子の機能解析についても、単離したTOMTRY遺伝子をシロイヌナズナへ形質転換し、解析を進めた。
|
今後の研究の推進方策 |
1、CPCの細胞間移行に必須なアミノ酸残基の決定については、作製した4種類のCPC-ETC1キメラ形質転換体の表現型を解析し、細胞間移行の有無により根毛形成に違いがあるかどうか明らかにします。 2、CPCのS1配列のアミノ酸を置換した形質転換体の根を共焦点レーザー顕微鏡で観察し、CPC:GFP融合タンパク質の局在を調べる。その結果、S1配列の中で細胞間移行に最も重要な残基が決定できると考えます。 3、トマトのCPCオーソログ遺伝子の機能解析については、トマトのSlTRY形質転換体の解析を進める。また、CPCを形質転換したトマトの表現型の解析により、CPCがトマトでも機能するかどうか明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費、直接経費の使用については、核酸精製キットや植物栽培用品を中心とした物品費700,000円、植物生理学会等の国内学会、海外学会参加費を含む旅費300,000円、植物栽培管理等のための謝金100,000円、論文投稿料を含むその他100,000円の計1,200,000円の研究費使用を計画している。
|