研究課題/領域番号 |
23570058
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
内海 俊樹 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (20193881)
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キーワード | ミヤコグサ / 根粒菌 / 共生窒素固定 / リポ多糖 / リポ多糖結合タンパク質 / 形質転換 / 毛状根 |
研究概要 |
「共生の成立には、宿主植物のリポ多糖結合タンパク質(LBP)による根粒菌リポ多糖(LPS)の認識が必須であるかどうかを明らかにする。」ことが目的である。そのために、ミヤコグサの4種のLBP遺伝子(LjLBP1,LjLBP2, LjLBP3, LjLBP4)に着目し、次の3サブテーマに取り組んでいる。(1)LBP遺伝子の発現を強化、及び、抑制した形質転換毛状根の共生成立過程の解析、(2)LBP遺伝子変異植物体の共生成立過程の解析、(3)根および根粒の組織・細胞でのLBPの局在部位の解析。それぞれのサブテーマについて、今年度の研究成果は次の通りである。 サブテーマ(1):初年度に引き続き、ミヤコグサを材料として、RNAiによるLBP遺伝子の発現抑制形質転換毛状根を作出し、根粒菌との共生に関する表現型を検討した。根粒着生の抑制や共生の崩壊については、表現型が安定せず、形質転換毛状根の実験系は、本研究目的の達成には適していないと判断した。 サブテーマ(2):初年度にLjLBP変異ミヤコグサより収穫した種子は、発芽率が低い等、変異源処理によりLjLBP以外にも変異が入っていると考えられる。実験遂行に適した系統の確立は、現在も進行中である。ミヤコグサ根粒菌のLPSの構造は、LjLBPタンパク質との親和性を解析するために重要な情報である。今年度は、LPSのリピドA部分の構造を明らかにし、論文を発表した。 サブテーマ(3):初年度に構築した蛍光タンパク質mOrangeとLjLBP遺伝子との融合遺伝子を使用して、ミヤコグサの根における局在部位を検討した。その結果、LjLBPタンパク質は、細胞外へ分泌されていることが示唆された。また、根粒内部では、根粒菌が感染している細胞に局在している可能性が示された。これらは、LjLBPの機能を考える上で、重要な新知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
サブテーマ(1)では、「LjLBP遺伝子の発現抑制によって、共生が破綻する」という現象を安定して再現することができず、未だ表現型の確定ができていない。サブテーマ(2)は、ミヤコグサ根粒菌のリポ多糖の構造についての論文を発表することができた。しかし、変異植物系統の確立は、手間取っている。サブテーマ(3)は、順調に進行しており、予備的な実験結果ではあるものの、LjLBPの細胞・組織における所在について、重要な新知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
「LjLBP遺伝子の発現抑制によって、共生が破綻する」という表現型が安定せず、未だ表現型の確定ができていない点が、最大の問題である。これまで、変異源処理集団よりTILLING法にて選抜された変異植物、及び、形質転換毛状根を使用して研究を展開してきたが、実験系の見直しの必要があると考えている。トランスポソン挿入によるミヤコグサの変異体集団が構築され、リソースとして利用可能となった。変異体集団のなかには、LjLBP遺伝子に変異が生じていることが期待できる変異体が存在することを確認した。最終年度は、このトランスポソン挿入変異体を入手して実験を進めることも計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画通りの使用(物品費=450千円、旅費=200千円、人件費・謝金=100千円、その他=50千円)を予定している。
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