研究課題/領域番号 |
23570064
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
井上 和仁 神奈川大学, 理学部, 教授 (20221088)
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キーワード | 硫黄酸化 / 緑色硫黄細菌 / 光合成電子供与系 / チオ硫酸 / 硫化水素 |
研究概要 |
緑色硫黄細菌の硫黄酸化マルチ酵素系(TOMES)成分と光化学系への電子供与体である可溶性Cyt c-554を細胞から単離精製した。TOMES成分のうちSoxYZはチオ硫酸を結合すると推定される保存されたシステイン残基を持つ。SoxYZを硫化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムで前処理し、チオ硫酸に依存したCyt c-554の還元活性を測定した。硫化ナトリウムで前処理したSoxYZは未処理の場合と比較して10倍~20倍程度活性が増大した。一方、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムで前処理した場合の活性は、未処理の場合とほとんど同じ活性を示した。次に、前処理したSoxYZをMALDI-TOF MSで質量分析したところ、10640m/z付近にSoxZ(10640 m/z)のピークが出現した。SoxZはいずれの前処理によっても質量数に変化は見られなかった。一方、硫化ナトリウムで処理したSoxYZのSoxYはアミノ酸配列から推定されるSoxYの質量数12856 m/z付近にピークが現れたが、亜硫酸ナトリウムとチオ硫酸ナトリウムで前処理したSoxYZからのSoxYの質量数は、硫化ナトリウムで前処理した場合と比較して質量数が約30~100 m/zほど増大した。これらの結果は、硫化ナトリウムはSoxYのSH基ほ保護する効果持つ事を示唆する。 TOMES成分のうちSoxAXKの構成サブユニットの組換え蛋白質の発現条件を検討し、rSoxAとrSoxXの発現系に関しては目的蛋白質が細胞内で発現していることを確認した。rSoxKの発現系に関しては、細胞内での発現量が少なく、発現ベクターを変える必要があるかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
硫黄酸化マルチ酵素系(TOMES)成分のうちSoxYZはチオ硫酸を結合する足場蛋白質であり、他の硫黄酸化細菌のSoxYZにも保存されているシステイン残基がある。TOMESの活性は、しばしば標品により活性が変化することが報告されていた。この活性の不安定性がSoxYZのシステインに亜硫酸イオンが結合することにより不活性化され、硫化物イオンにより-SH基が保護、あるいは、活性化される可能性を今年度の研究成果で得られた。しかしながら、ネーティブのSoxAXKやその組換え蛋白質の結晶化は遅れている。またフラビン蛋白質であるSoxFの発現系の構築も成功していないため、やや遅れているとの自己評価をしている。
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今後の研究の推進方策 |
TOMESの活性を促進するSoxFの発現系の作製を急ぐ。また、SoxFに類似したフラビン蛋白質であるSoxF1やSoxF3(fcsd)の発現系の構築を急ぐ。SoxWなどのsox遺伝子クラスターに存在する関連遺伝子の機能を明らかにするためこれらの遺伝子の発現系、破棄株を作製する。ネーティブのSoxAXKや組換え蛋白質rSoxA, rSoxX, rSoxKの結晶化の条件を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度計画していたネーティブのSoxAXKやその組換え蛋白質の結晶化が遅れており、消耗品類の購入を予定した分を次年度に持ち越すこととなった。次年度はSox関連遺伝子の発現系や破壊株の作製に必要な酵素類、試薬類、プラスチック器具類、ベクターDNAなどを購入する。結晶化についての技術供与を得るために金沢大学の瀬尾博士に協力を得るための国内旅費を計上する。
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