研究概要 |
チオ硫酸を利用する硫黄酸化細菌はチオ硫酸酸化マルチ酵素系(TOMES)を持つ。緑色硫黄細菌Chlorobaculum tepidumは始源的な特徴を持つ光合成細菌でTOMESによってチオ硫酸を光合成の電子供与体とする。本研究は本細菌のTOMESを解明することを目的とし次のような成果を得た。(1) SoxAXKの構成サブユニットの組換え蛋白質を用いてSox蛋白質のアッセンッブリー過程を明らかにする為の結晶化条件の検討に着手した。(2)SoxYZはチオ硫酸を結合すると推定される保存されたシステイン残基を持つ。SoxYZを硫化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムで前処理し、チオ硫酸に依存したCyt c-554の還元活性を測定した。硫化ナトリウムで前処理したSoxYZは10倍~20倍程度活性が増大した。一方、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムで前処理した場合は、未処理の場合とほとんど同じ活性を示した。MALDI-TOF MSで質量分析したところ、硫化ナトリウムで処理したSoxYはアミノ酸配列から推定される質量数12856 m/z付近にピークが現れたが、亜硫酸ナトリウムとチオ硫酸ナトリウムで前処理したSoxYの質量数は、硫化ナトリウムで前処理した場合と比較して質量数が約30~100 m/zほど増大した。(3)ところが、SH基の保護剤であるDTTで処理するとMALDI活性の増大は見られなかった。MALDIの分解能を上げた測定では、硫化水素処理では12,852 m/zと12,885 m/zの大小2つのピークが現れたが、DTT処理では主要なピークは12,852 m/zのみであった。これらの結果から活性型のSoxYZは12,885にピークが現れるSoxYを持つことが考えられる。このピークはSoxY(-SH)にS(32 m/z)が結合したSoxY(-S)-S-であると推定される。
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