研究課題/領域番号 |
23570068
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
小林 哲也 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (00195794)
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研究分担者 |
菊山 榮 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 名誉教授 (20063638)
岩室 祥一 東邦大学, 理学部, 准教授 (70221794)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ハーダー腺 / ファブリキウス嚢 / 抗菌ペプチド |
研究概要 |
本研究は、生体と外界との接点近傍に位置する免疫器官を用いて、主に抗菌物質を中心とした先天的免疫システムとリンパ系細胞を中心とした後天的免疫システムの機能的な連携、及びホルモンによる本システムの調節機構について検討することを目的としている。このため平成23年度は、免疫器官から抗菌ペプチドを探索し、その生理活性を測定することを計画した。 ニワトリの肝臓ゲノムDNAを用いて同定されたFowlicidin、及び白血球抽出物から精製されたGallinacinの塩基配列を基にプライマーを作製し、ウズラ(Coturnix japonica)のファブリキウス嚢、及びハーダー腺から抽出したtotal RNAを用いてRT-PCRを行い、塩基配列の解析を行った。その結果、ウズラのファブリキウス嚢ではFowlicidinが、またハーダー腺ではFowlicidinとGallinacinが発現していることが明らかとなった。 また、食物を取り入れる口腔も、生体と外界との接点であることから、舌を用いて同様の検索を行った。ウシガエル(Rana catesbeiana)舌から抽出したtotal RNAを用いて、Rana属で同定された数種の抗菌ペプチドで保存されている塩基配列を参考に作製したプライマーによるRT-PCRを行った。さらに増幅産物のクローニングを行い塩基配列について解析した。その結果、Chensirin-2CBaの配列が得られた。本ペプチドのグラム陰性菌と陽性菌に対する抗菌活性は現在まで確認されていないため、マスト細胞からの脱顆粒促進活性について測定を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、免疫器官から抗菌ペプチドを探索しその生理活性を検討することを目的としてきた。その結果、ウズラのファブリキウス嚢とハーダー腺ではFowlicidinとGallinacinが、またウシガエルの舌ではChensirin-2CBaが発現していることを明らかにした。Chensirin-2CBaのグラム陰性菌と陽性菌に対する抗菌活性はこれまでのところ報告されていないため、マスト細胞からの脱顆粒促進活性について測定を進めている。したがって、(2)と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に引き続き、抗菌ペプチドの探索と生理活性の解析を進めるとともに、23年度に得られた結果を利用して、(1)抗菌ペプチドの発現細胞の同定と、(2)発現調節機構の解析を進める。(1) 抗菌ペプチドの発現分布を明らかにするため、ハーダー腺、ファブリキウス嚢、及びその他の体内諸器官を用いたRT-PCR解析を行う。また、作製した抗体を用いた免疫組織化学法、あるいはin situ hybridization 法により抗菌ペプチドの発現細胞を同定する。(2) 我々は既にファブリキウス嚢において数種のホルモン(脳下垂体ホルモン、ステロイドホルモン、アミン系ホルモン)が産生されていることを明らかにしている。そこで、発現調節機構の基礎的解析として、ハーダー腺、ファブリキウス嚢、及びその他の諸器官における、これらホルモン受容体の発現についてRT-PCR法により検討する。さらに、可能であれば培養系(ニワトリファブリキウス嚢株細胞など)を用いて、これらホルモンの抗菌ペプチドの発現に対する効果について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
抗菌ペプチドの産生細胞の同定や生理活性の測定には、同ペプチドの合成が必要となるため、繰り越した研究費を合わせて以下のように使用する計画である。 一般的な試薬と実験動物に加え、抗菌ペプチドの探索に必要な遺伝子工学関連試薬、生理活性の測定や抗体の産生に必要なペプチドの合成、組織学的実験に必要な試薬、実験用の細胞と培養用試薬などに関する消耗品費が必要となる。 また、学会やその関連集会などで研究成果を発表するための旅費と、試料を集める際に補助者に対する謝金、が必要となる。さらに、塩基配列の解析及び産生細胞の同定に必要な抗体作製に関する経費は、専門の業者に委託する方が能率的であるため、その受託費が必要となる。あわせて、積極的な論文発表を行うため、投稿論文の英文校正費などが必要と考える。 以上の経費を用いて、抗菌ペプチドの探索と生理活性の解析を進めるとともに、発現細胞の同定と発現調節機構の解析を進める。
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