研究課題/領域番号 |
23570068
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
小林 哲也 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (00195794)
|
研究分担者 |
菊山 榮 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 名誉教授 (20063638)
岩室 祥一 東邦大学, 理学部, 教授 (70221794)
|
キーワード | ハーダー腺 / ファブリキウス嚢 / 抗菌ペプチド |
研究概要 |
本研究は、生体と外界との接点近傍に位置する免疫器官を用いて、主に抗菌物質を中心とした先天的免疫システムとリンパ系細胞を中心とした後天的免疫システムの機能的な連携、及びホルモンによる本システムの調節機構を解析することを目的としている。 平成23年度は、ウズラ(Coturnix japonica)のファブリキウス嚢ではfowlicidinが、ハーダー腺ではfowlicidinとgallinacinが発現していることを明らかにした。 本年度は、ファブリキウス嚢において発現しているfowlicidinを中心に検討を進めた結果、① 前駆体cDNAクローンが得られ、fowlicidin-1、-2、-3が同定された。またこれらペプチドは、② signal領域、cathelin領域、cathelicidin領域から成ること、このうちsignal領域とcathelin領域の配列は各ペプチド間で相同性が高いが、成熟ペプチドであるcathelicidin領域の配列は大きく異なり、特に、同-2と-1あるいは-3との間の相同性は低いことが明らかになった。さらに、fowlicidin-2について解析を進めたところ、同ペプチドには、③ 抗酸化作用やレクチン活性は認められない一方で、④ グラム陰性菌と陽性菌に対しては生育の抑制と膜破壊型の強い抗菌活性を示すこと、加えて、⑤ 前駆体mRNAは主にファブリキウス嚢内腔の上皮細胞に発現していること、等の結果が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、ウズラの抗菌ペプチドの探索と生理活性の解析、同ペプチドの発現細胞の同定と発現調節機構の解析を計画した。このうち発現調節機構の解析は準備段階であるが、それ以外は進展し、幾つかの重要な知見を得ることが出来た。概要には記載していないが、発現細胞の同定と発現調節機構の解析に必要な抗体の作成も進んでいる。さらに、これまで得られた成果の一部は、学会で発表しており、計画はおおむね順調に進展していると判断した。現在、これら成果を学術論文として発表する準備を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、抗菌ペプチドの探索と生理活性の解析及び発現細胞の同定を進めるとともに、24年度に得られた結果を利用して、① 発現調節に関わる因子の同定と、② 同因子による発現調節機構の解析を推進するため、次の①と②を計画している。 ①ファブリキウス嚢では数種のホルモン(脳下垂体ホルモン、ステロイドホルモン、アミン系ホルモン)の合成が明らかにされていることから、ハーダー腺、ファブリキウス嚢、及びその他の諸免疫器官における、これらホルモン受容体の発現をRT-PCR法により解析する。さらに、受容体の発現が認められたホルモンを用いてハーダー腺やファブリキウス嚢等を処理することにより、fowlicidinを中心とした抗菌ペプチドの発現に及ぼす影響を調べる。 ②細菌由来リポポリサッカライドや抗原でファブリキウス嚢やハーダー腺を感作することが抗菌ペプチドや免疫グロブリンの発現に与える影響について調べるとともに、抗菌ペプチド処理により死滅させた細菌の破砕片をファブリキウス嚢に取り込ませることが抗体の力価に与える影響を調べる。 上記の研究を通じて、抗菌物質を中心とした先天的免疫システムとリンパ系細胞を中心とした後天的免疫システムの機能的な連携、及びホルモンによる本システムの調節機構について検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
|