研究課題
鳥類と哺乳類は外温性である原始爬虫類からそれぞれが独立して内温性を獲得した動物群である。このような進化的な背景を重視し、「生殖と代謝に対する環境因子(光と温度)の影響を生殖とエネルギー代謝を中心としてその内分泌調節機構での多様性を分子生物学的に捉える」ことを主目的とし本研究を開始した。その結果次のような注目すべき成果を得た。①短日処理のウズラの精巣でAMHとその転写因子の発現増加、②ニホンヤモリのinsulinの高い変異とproglucagonの新規cDNA分子種の発見。これら成果に基づき、今年度は①ウズラ生殖腺でのAMH情報伝達系の解析、②ヤモリでの膵臓ホルモンの進化系統学的解析、の2点に重点を置き研究を進めた。以下に3年間を通じて得られた成果を簡単に要約する。生殖腺に関する研究では、爬虫類と鳥類のTex27のcDNAの分子同定とmicroRNAによる制御の可能性を明らかにした。一方、AMHとその転写因子、そしてAMH受容体の発現解析を短日処理したウズラの精巣で行い、性分化因子であるAMH情報伝達系が成体での精巣でも重要な生理機能を持っていることを示した。一方、エネルギー代謝の研究では、ニホンヤモリ(Gekko japonicus)のinsulinとproglucagonの分子生物学的な特性が、他の脊椎動物とは大きく異なっていることを発見した:①極めて低いinsulinアミノ酸配列の保存性②GLP-1とGLP-2各々のみをコードするmRNAの優占的な発現。そして引き続き、これらの分子特性の進化系統学的な解析も進めた。以上の研究成果は、有羊膜類動物の環境適応に関する内分泌制御機構の多様性を示すものである。特にエネルギー代謝での各ホルモンにおける分子生物学的特徴は「エネルギー代謝制御機構に新しい観点」を提供するものでもあり、エネルギー代謝に起因する多くの疾患の分子機構の解明にも大きく寄与できるものである。
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Gonadotropin-Releasing Hormone (GnRH): Production, Structure & Function
巻: - ページ: 259-263
978-1-62808-478-8
http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/naibunpi/biopark/Biopark-Index.htm