研究課題
前年度までの研究で、クロヌタウナギの精巣cDNAライブラリーからコレステロール側鎖切断酵素(CYP11A)の遺伝子をクローニングし、そのmRNA発現量が雌雄とも生殖腺の発達段階と相関して増加すること、及びCYP11A mRNAの発現部位をin situ hybridizationにより調べ、予備的な結果を得たことを報告した。今年度、さらに詳しく調べた結果、CYP11A mRNAは、精巣では間細胞と管状境界細胞の両方で、卵巣では莢膜細胞で発現していることが明らかになった。さらに、クロヌタウナギGTHを加えて培養した精巣では、有意にCYP11Aの遺伝子発現が上昇することを確認し、学術雑誌に投稿した。本研究で雌ではCYP11AmRNAの発現動態と血中エストラジオール動態に正の相関が見られるのに対し、雄ではCYP11AmRNAの発現動態と血中エストラジオールやテストステロン動態に相関性がみられないことから、雄では未知のアンドロジェンを主要性ホルモンとしていることが示唆された。一方、ヌタウナギのGnRHを含む新規視床下部ペプチドの単離をめざして、MALDI-TOF-MS分析法で得た有力な候補について免疫組織化学により調べたが、新規ペプチドの同定には至らなかった。また、当初予定していたヌタウナギのGTH遺伝子の構造解析についても、成果をあげるまでに至らなかった。この3年間の研究を通じて、エストロジェン投与がGTH分泌を抑制すること、視床下部の新規PQRFamideペプチドがGTHmRNAの発現を促進することなどの成果を上げることができた。また、ヌタウナギの生殖腺における性ステロイド合成部位を特定することができた。これらの結果は、高等脊椎動物と同等であることから、脊椎動物は進化の初期段階で下垂体を獲得すると同時に、視床下部ー下垂体ー生殖腺軸を確立したものと考えられる。
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