研究課題/領域番号 |
23570077
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
橋本 寿史 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 助教 (30359757)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 幹細胞 / 色素細胞 / 細胞分化 / 転写因子 / 体色 / 神経堤細胞 / メダカ / HMGボックス |
研究概要 |
神経堤細胞の派生物である色素細胞は、その発生過程で異なるサブタイプが分化する。メダカには黒、白、黄、虹色の4サブタイプが存在するが、ゼブラフィッシュでは白色素胞がない。我々は最近、sox5変異がメダカの白および黄色素胞に発生異常をもたらすことを見出した。本研究では、神経堤細胞から色素細胞への発生分化の過程でSox5が果たす役割を明らかにする。 Sox5はSoxDファミリーに属するが、構造的な特徴から、必ずしも転写活性化に担っておらず、類似のHMGボックスを持つSoxEファミリーのインヒビターとして機能することが示唆される。本研究では、Sox5とSoxEの相互作用が神経堤由来幹細胞の分化制御を行う可能性に注目して実験を行っている。本年度は以下の成果を得た。1)メダカTILLING変異体の単離: sox5の標的となるsoxE遺伝子を明らかにするため、TILLINGライブラリーをスクリーニングしてsox9およびsox10の変異体を得た。2)Tg(sox5:cre)トランスジェニックメダカの作製: sox5発現細胞を永続的に標識し、分化後の色素細胞サブタイプを同定するため、sox5プロモーターの支配下でcreリコンビナーゼを発現するメダカを作製した。これをTg(beta-actin:loxp-dsred2-loxp-egfp)と交配し、標識されたegfp陽性細胞を追跡したが、これまでのところ、色素細胞でegfpが観察されていない。3)ゼブラフィッシュのsox5: sox5変異がゼブラフィッシュにおいて虹色素胞の発生異常をもたらすことを明らかにした。 今後、上記の研究をさらに推進し、Sox5とSoxEの相互作用が色素細胞やその他の器官において細胞のサブタイプの産生数を決定する可能性を追求したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
白色素胞および黄色素胞の誕生時期の同定は行えなかったが、soxE遺伝子のTILLING変異体を単離することができた。TILLING変異体を実験に使えるまでに系統化するには半年以上の時間を要するため、早期にスクリーニングを行った。Cre-loxp系を利用したsox5発現細胞の永続的標識については予定通り達成した。
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今後の研究の推進方策 |
色素細胞を3種しか持たないゼブラフィッシュと比較しながら、色素細胞サブタイプの誕生時期同定を行う(平成23年度に計画していた実験)。現在使っているCre-loxpシステムのレポータートランスジェニックでは分化した色素細胞を標識できない可能性があるため、beta-actinプロモーターを他のユビキタスプロモーター変更する可能性を考慮する。 メダカで得られた知見を一般的な法則へと展開するために、ゼブラフィッシュの色素細胞発生と比較しながら、研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の前半は、「頭脳循環を活性化する若手研究者海外派遣プログラム」および「組織的な若手研究者等海外派遣プログラム」の支援を得て、私自身が海外渡航し共同研究に参加する予定である。共同研究者のRobert N. Kelsh博士 (University of Bath)は、ゼブラフィッシュの色素細胞発生研究の第一人者であり、神経堤細胞から色素細胞への分化におけるsox10の機能を中心に研究している。本研究ではR.N.Kelshと共同して、神経堤幹細胞においてsox5とsox10の相互作用が持つ役割を、メダカとゼブラフィッシュをモデルとして比較発生学的に研究する。 このため、私の渡航中(H24年度前半)に現研究室(名古屋大)でメダカの世話を任すことができる飼育補助員の雇用費を計上した。また、残りの予算をH24年度1年間の実験に必要な消耗品費に充てたい。
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