研究課題/領域番号 |
23570081
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
北澤 多喜雄 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (50146338)
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研究分担者 |
海谷 啓之 独立行政法人国立循環器病研究センター, その他部局等, 研究員 (40300975)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ニワトリ / 消化管 / 成長過程 / グレリン / グレリン受容体(GHS-R) / モチリン / モチリン受容体 |
研究概要 |
本研究は、成長過程でのニワトリ消化管グレリン反応性の変化とその特徴を調べ、グレリンの生理学的役割が動物の成長過程でどのように変わっていくのかを明らかにする試みである。今年度の実績を以下に示した。(1)日齢による消化管薬物反応性の変化:そ嚢、腺胃、結腸はグレリンに反応性を示したが、回腸は非感受性であった。そ嚢のグレリン収縮は、孵化後100日まで殆ど変化しなかったが、腺胃でのグレリン収縮は日齢により減少した。腺胃におけるカルバコール、セロトニン収縮は日齢によっても変化しなかったが、グレリン類似peptideのmotilinによる収縮も日齢により低下した。収縮の低下はアトロピン処置標本では顕著ではなかった。このことから、日齢によりmotilin収縮の神経性要素が低下する可能性が考えられた。一方、回腸のmotilin収縮(筋原性)は日齢によっても変化しなかった。腺胃でグレリンおよびmotilin収縮のみが日齢により変化することが示された。(2)日齢によるグレリン受容体(GHS-R)およびmotilin受容体mRNA発現の変化:腺胃のGHS-R発現は日齢により減少した。一方、そ嚢、回腸、結腸では著明な変化は起きなかった。Motilin受容体発現は、回腸で最も高く、そ嚢、腺胃、結腸での発現はほぼ同程度であった。日齢によりmotilin受容体発現も低下した(腺胃が著明)。消化管以外の組織、特に脳についてはサンプリングを終了した。24年度にGHS-R発現の解析を行う。(3)腺胃および血液のサンプリング:1-100日齢でのグレリン動態を明らかにするため血液、グレリンが合成される腺胃のサンプリングを行った。24年度に血液中のグレリン濃度変化、グレリンmRNA発現の変化、グレリン合成酵素発現の変化を解析する予定である。(4)他の動物種におけるグレリン研究の推進:モルモット、イヌでの成績をまとめて論文に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1) グレリン、GHS-Rに加えて、ニワトリ消化管においてmotilin反応性, motilin受容体の発現についても検討したため。Motilinは、グレリンに類似した消化管ホルモンでありニワトリでも反応を誘起する。近年、種々の哺乳動物でグレリンとmotilinの相互作用が証明されており、研究の質をあげるためにもmotilinついてもニワトリで検討する必要があると考えた。(2)イヌおよびモルモットで行っていたグレリン関連の研究に区切りがつき、ちょうど論文をまとめる時期にあったこと。グレリンは種々の動物でその作用が検討されており、比較生物学的見地からも興味深い物質であるので、他の動物での研究も遅滞なくまとめ、論文作成する必要があると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
グレリン、GHS-R mRNA発現検討に必要なサンプリングについては、23年度中にほぼ終了したが、今後、組織レベルで検討するため試料のサンプリングを行う必要がある。24年度は、上術した遺伝子の発現解析が中心になってくるので、研究分担者の海谷に、今年度と同じ様に研究費を分担した。グレリンmRNAの発現と合わせてグレリンに脂肪酸をつける脂肪酸添加酵素(GOAT)のcloning、発現部位の解析も行う。日齢により神経上に存在するGHS-R, motilin受容体が減少している可能性が示唆されたので、このことを明らかにするための組織的(in situ hybridization)、機能的(放出実験)実験方法を構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)GHS-R mRNA, グレリンmRNAおよびGOAT mRNAの分子生物学的な検討に必要な試薬、実験器具の購入、(2)ニワトリの購入および飼育飼料、(3)収縮実験および放出実験に用いる器具、試薬および混合ガス、(4)免疫組織化学的な検討に必要な器具、抗体、染色用の試薬、(5)ニワトリグレリン合成費用、(6)論文の校正費用、(7)学会発表のための旅費
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