研究課題/領域番号 |
23570081
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
北澤 多喜雄 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (50146338)
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研究分担者 |
海谷 啓之 独立行政法人国立循環器病研究センター, その他部局等, その他 (40300975)
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キーワード | ニワトリ / 消化管収縮性 / グレリン / モチリン / 成長 / 受容体発現 / 内因性グレリン / 中枢神経 |
研究概要 |
本研究では成長過程におけるニワトリ消化管のグレリン反応性と受容体発現の変化を明らかにして、このペプチドの生理学的役割が成長過程で変化するか検討した。以下、実績を示す。 ①日齢による消化管グレリン反応性およびグレリン受容体(GHS-R1a)発現の変化:ニワトリ消化管で腺胃のグレリン反応性が日齢により低下することを示した。一方、そ嚢のグレリン反応性は日齢によっても変化しなかった。グレリン受容体発現は腺胃のみで有意に低下した。即ち、消化管のグレリン受容体発現は部位依存性に日齢により変化することが解った。グレリンfamilyに属するモチリンの腺胃における反応性も低下したが、回腸での反応は変化しなかった。モチリン受容体の発現量は、いずれの消化管部位でも減少する傾向にあったが、減少は腺胃で著明であった。Atropine処置腺胃標本では、日齢によるモチリン反応性の変化は有意ではなくなったので、日齢により主に神経性反応が低下することが示唆された。 ②日齢による内在性グレリン量の変化:各日齢における腺胃グレリン量、血中グレリン濃度の変化を検討した。いずれも3日齢までは低値であったが5-10日齢で増加し30日齢でほぼ一定の値になっていた。腺胃ではグレリン受容体の発現量は、グレリン含有量と逆相関を示すことが解った。 ③中枢神経グレリン受容体発現の変化:中枢神経では、小脳、視床下部、下垂体、中脳でグレリン受容体の高い発現を認めたが、嗅球、松果体、大脳半球では低かった。成長に伴い発現は小脳、中脳で低下したが、他の部位では変化が認められなかった。グレリン、グレリン脂肪酸付加酵素(GOAT) の分子生物学的な解析についても手法を確立し中枢神経での発現変化を明らかにした。 ④論文作成:魚類の消化管収縮におよぼすグレリンの作用、ニワトリ消化管グレリン、モチリン反応性の成長による変化について論文を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①成長過程におけるグレリン、グレリン受容体、グレリン脂肪酸付加酵素(GOAT) mRNAの解析を中枢神経と腺胃で行った。中枢神経では成長との関係で相関がある成績が得られている(結果参照)。しかし、グレリンが合成分泌される腺胃におけるmRNAの解析は3回おこなっているが数値にばらつきがあり、一定の方向性が得られていない(蛋白質レベルの解析では良い結果が出ている)。サンプリング方法等を再度検討している。②グレリンの消化管運動におよぼす影響の比較生物学的検討ということでニワトリと同時進行で行っていた魚類(金魚、ニジマス)の消化管収縮に関する仕事について論文作成を行う必要があった(魚類の論文は公表した。ニワトリの成績に関しても2013年度前半に公表される予定)。また研究分担者として参加している課題についても論文作成をした(ムスカリン受容体ノックアウト動物を用いた検討)。
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今後の研究の推進方策 |
腺胃については、再度サンプリングを行いグレリン受容体、グレリン、グレリン脂肪酸付加酵素(GOAT)mRNA発現について検討する。同時に腺胃や血液中グレリン濃度についてサンプルを集め再測定する。このため研究分担者の海谷にも研究費を分担した。グレリンと類似するペプチドのモチリンについても成長過程での組織、血液中の濃度を測定する必要性が出てきておりニワトリモチリン抗体を作製して測定系を確立する必要がある。腺胃グレリン誘発性収縮の減少は神経性反応で著明であったので免疫組織化学的または機能的な手法によりこのことを確認する。また他の消化管ペプチド(neurotensinやsubstance P)においても腺胃での反応性が成長で変化するか解析する。In vivoでグレリンの摂食に与える影響、体重増加作用などについて解析方法も含めて検討を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
①グレリン受容体mRNA, グレリンmRNAおよびGOAT mRNAの分子生物学的な検討に必要な試薬、実験器具の購入、②ニワトリの購入および飼育飼料、③収縮実験および放出実験に用いる器具、試薬および混合ガス、④免疫組織化学的な検討に必要な器具、抗体作成、染色用の試薬、⑤グレリン合成費用、⑥論文の校正費用と別刷代
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