研究課題/領域番号 |
23570082
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
永田 典子 日本女子大学, 理学部, 准教授 (40311352)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 花粉 / シロイヌナズナ / ポーレンコート / タペータム / 電子顕微鏡 / 脂質 |
研究概要 |
花粉外壁に存在する脂質系粘着物質のポーレンコートは、葯タペータム内の脂質系オルガネラが内包する脂質成分の一部から作られると言われているが、その脂質成分の局在性・機能性やポーレンコート形成の仕組みは未だ不明のままである。私は、電子顕微鏡レベルでの葯における脂質の局在マップを作成し、シロイヌナズナ脂質関連遺伝子欠損変異体の観察を行うことを目的にした。これにより、ポーレンコートを形成する機能性の脂質分子種を特定し、その脂質の局在性と役割を明らかにすると同時に、ポーレンコート形成過程における脂質選別や輸送沈着のしくみを解明することが可能となる。 ポーレンコートはタペトソームとエライオプラストの両オルガネラの脂質成分の一部を含むことはわかっているが、形成過程のどの段階で脂質の選別が行われるのか等の詳細は全く不明であった。そこで、私は、ポーレンコート形成過程を通じた時空間的な観察を行った。その結果、タペトソームとエライオプラストの融合過程を明らかにすることができた。 また、タペータム膜上にありステロールの脂質輸送に関連すると予想されるトランスポーターの欠損突然変異体、およびワックス合成異常を示す突然変異体の二種類の変異体を材料に、ポーレンコート形成のプロセスを詳細に電子顕微鏡観察を行った。その結果、前者の変異体では、タペータム膜上に脂質系物質の蓄積がみられ、さらに葯室内に異常な脂質の凝集物がみられた。また後者の変異体では、ポーレンコートに形態的異常が観察された。以上の結果は、ステロールやワックスといった脂質が、花粉壁・ポーレンコートの形成に重要な役割を果たしているということを示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂質系の突然変異体解析について、2つの変異体の解析を行うことができた。1つは、これまでにない「脂質輸送」に関係する変異体であり、脂質の有無だけでなく輸送経路の解明に一歩近づく成果をあげられた。この点では、当初の予想よりも進展があったといえる。一方、幾つかの固定法を検討していたが、うまくいく固定法は多くはなく、その点では改善の余地がある。
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今後の研究の推進方策 |
電子顕微鏡レベルでの葯における脂質の局在マップを作成するために、現在固定法の検討を進めている。複数の固定法で得られた画像をつき合わせる事により、複雑な脂質の局在性が明らかになると予想される。あわせて、突然変異体解析では、現在オートファジー系の変異体で興味深い結果が得られつつあるので、その解析にも注力して行く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画通り、主として電子顕微鏡観察を進めるための試薬・器具等、および実験補助のアルバイト雇用費等に使用する予定である。
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