研究課題/領域番号 |
23570083
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
刀袮 重信 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (70211399)
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研究分担者 |
岡本 威明 川崎医科大学, 医学部, 助教 (20398431)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アポトーシス / 核 / ヒストン / リモデリング |
研究概要 |
アポトーシスの分子機構を実行過程(最終過程)に特に注目して解析してきた。実行過程中で最も未解明な核凝縮について、これまでにcell-free アポトーシス法と微速度映画を用いて、核凝縮がリング形成、ネックレス、核崩壊の3ステップを忠実にたどることを発見し、そのうち2~3分で生じるリング構造を引き起こす因子(リング形成因子)を部分精製した。今年度、このリング形成を起こす因子を生化学的に同定しようとして大量に細胞培養し、そこから精製したが、同定には至らなかった。ただ、その過程で、このリング形成とヒストンH2Bのリン酸化が密接に関連することを見出した。H2BのSer14のリン酸化によってクロマチンがリモデリングした状態がリングであると考えられる。リング形成因子はこのH2BのSer14リン酸化酵素である可能性が浮上してきた。 またこのリング状態の核に、DNase, caspase-6をかけると第2,3のステップであるネックレス、核崩壊に進むこと、DNase, caspase-6の特異的阻害剤が次のステップへの移行を完全に抑制することから、ネックレス、核崩壊ステップに進むための主たる要因はDNase, caspase-6であることが証明できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2つの研究方向である遺伝学的探索と生化学的探索のうち、遺伝学的探索の方向が遅れている。後者の生化学的探索に全精力を集中させたためである。この生化学的探索によって、いくつかの重要な知見は得られたが、凝縮因子を同定するという最終目的には到達できなかった。そして遺伝学的探索は、準備段階に留まっているので、「やや遅れている」と判断した次第である。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝学的な方向として、ヒト半数体細胞KBM7にまずエコトロピック受容体遺伝子を導入、発現させ、マウス由来レトロウイルスが感染できるようにする。その細胞がまだ半数体であることを確認した後、マウスレトロウイルスを感染させ、インテグレートした細胞のみを抗生剤存在下で増殖させる。それらから核を取り出し、部分精製したリング形成因子を作用させてリングにならない核を顕微鏡下で探し、レーザーキャプチャーで集める。レトロウイルスの配列のプライマーを用いてreverse PCRを行い、ウイルス由来のDNAが挿入された宿主側のゲノム配列を同定する。その近傍に遺伝子があるか否かをin silicoで検索する。 また生化学的な方向として、リング形成因子の候補としてH2BのSer14リン酸化酵素が考えられ、文献的にはMst1があげられているので組換えMst1を単離核にかけてリングになるか否かを確認したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝学的探索の方向、すなわち半数体細胞にレトロウイルスを感染させ、ノックアウト細胞ライブラリーを作製する研究に必要なDNAや試薬などは、ほとんど入手済みである。また、ライブラリー作製時ならびにレーザーキャプチャー操作時に、さまざまな煩雑な作業が予想されるので実験補助者が不可欠である。したがって次年度使用額と24年度請求額を合わせ、実験補助者への謝金と、血清や遺伝子工学用試薬など実験用の消耗品に充てる。
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