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2012 年度 実施状況報告書

アポトーシスにおける核の凝縮因子のゲノムワイドな探索: ヒト半数体細胞を用いて

研究課題

研究課題/領域番号 23570083
研究機関川崎医科大学

研究代表者

刀袮 重信  川崎医科大学, 医学部, 准教授 (70211399)

研究分担者 岡本 威明  愛媛大学, 教育学部, 講師 (20398431)
キーワード国際情報交換
研究概要

アポトーシスの分子機構を実行過程(最終過程)に注目して解析してきた。実行過程中で最も未解明な核凝縮について、これまでにcell-free アポトーシス法と微速度映画を用いて、核凝縮がリング形成、ネックレス、核崩壊の3ステップを忠実にたどることを発見し、そのうち2~3分で生じるリング構造を引き起こす因子(リング形成因子)を部分精製した。
昨年度、このリング形成を起こす過程で、このリング形成とヒストンH2Bのリン酸化が密接に関連することを見出した。H2BのSer14のリン酸化によってクロマチンがリモデリングした状態がリングであると考えられる。リング形成因子はこのH2BのSer14リン酸化酵素である可能性が浮上してきた。H2BのSer14リン酸化酵素が何であるかを決定するために、H2BのSer14をリン酸化する酵素として報告されているMst1の組換えタンパクを単離核にかけたが、リングにはならなかった。そこでヒト白血病細胞JurkatのMst1遺伝子をノックアウトした細胞株を作製した。この細胞からエクストラクトを精製し、単離核をリング化できるかどうかを解析しているところである。
ヒト半数体細胞を用いた研究は、本年度はマウスレトロウイルスに感染できるようにその受容体遺伝子を電気穿孔法で導入した。多数のクローンが得られたが、残念ながらすべて増殖能力が極めて低く、この目的には不適であることが分かった。
またアポトーシスにおける核凝縮を従来型の光学ならびに電子顕微鏡以外の、新しい光学システム・顕微鏡、例えば軟エックス線顕微鏡やフリーズフラクチャ電子顕微鏡法を共同研究で適用した。まだ決定的な画像、新知見は得られていないが、技術力は向上している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2つの研究方向である遺伝学的探索と生化学的探索のうち、遺伝学的探索の方向が遅れている。後者の生化学的探索によって、いくつかの重要な知見は得られたが、リング凝縮因子を同定するという最終目的には到達できていない。そして前者の遺伝学的探索は、開始したものの、遺伝子導入するだけで増殖が極端に遅くなるという、半数体であることに起因する問題に遭遇している。しかし、ヒトレトロウイルスを直接感染させる方法をとれば当初の目的を達成できると考えるので「やや遅れている」と判断した次第である。

今後の研究の推進方策

遺伝学的な方向として、ヒト半数体細胞KBM7にヒト由来レトロウイルス
を感染させる。インテグレートした細胞のみを抗生剤存在下で増殖させる。それらから核を取り出し、部分精製したリング形成因子を作用させてリングにならない核を顕微鏡下で探し、レーザーキャプチャーで集める。レトロウイルスの配列のプライマーを用いてreverse PCRを行い、ウイルス由来のDNAが挿入された宿主側のゲノム配列を同定する。その近傍に遺伝子があるか否かをin silicoで検索する。
また生化学的な方向として、リング形成因子の候補としてH2BのSer14リン酸化酵素が考えられる。候補となるリン酸化酵素を網羅的にリストアップし、それらの遺伝子をノックアウトしたJurkat細胞株を作製し、リング凝縮に関わるリン酸化酵素を同定する。

次年度の研究費の使用計画

予定していたヒト半数体細胞にマウス由来レトロウイルスを感染させる研究は、細胞自体の問題で遅れているために、次年度使用額が生じた。これは25年度請求額と合わせて、ヒト由来レトロウイルスを用いた遺伝学的研究、すなわち半数体細胞にヒトレトロウイルスを感染させ、ノックアウト細胞ライブラリーを作製する研究に使用する。ライブラリー作製時ならびにレーザーキャプチャー操作時に、さまざまな煩雑な作業が予想されるので、本年度も実験補助者が不可欠である。したがって実験補助者の人件費と、ヒトレトロウイルスシステムに必要な血清、試薬など実験用の消耗品に充てる。
他に生化学的な方向として、リン酸化酵素の同定を計画していて、それに必要な遺伝子工学的、生化学的な試薬にも充てる。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] The actin family member Arp6 and the histone variant H2A.Z are required for spatial positioning of chromatin in chicken cell nuclei2012

    • 著者名/発表者名
      Maruyama EO, Hori T, Tanabe H, Kitamura H, Matsuda R, Tone S, Hozak P, Habermann FA, von Hase J, Cremer C, Fukagawa T, Harata M.
    • 雑誌名

      Journal of Cell Science

      巻: 125(16) ページ: 3739-44

    • DOI

      10.1242/jcs.103903

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A Novel Mutation of Human Liver Alanine:Glyoxylate Aminotransferase Causes Primary hyperoxaluria Type 1- Immunological quantification and subcellular distribution2012

    • 著者名/発表者名
      Kawai C, Minatogawa Y, Akiyoshi H, Hirose S,Suehiro T, Tone S
    • 雑誌名

      Acta Histochemica et Cytochemica

      巻: 45 ページ: 121-129

    • DOI

      10.1267/ahc.11042

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Selective cell death of p53-insufficient cancer cells is induced by knockdown of the mRNA export molecule GANP2012

    • 著者名/発表者名
      Phimsen S, Kuwahara K, Nakaya T, Ohta K, Suda, Rezano A, Kitabatake M, Vaeteewoottacharn K, Okada S, Tone S, Sakaguchi N
    • 雑誌名

      Apoptosis

      巻: 17 ページ: 679-690

    • DOI

      10.1007/s10495-012-0711-8.

    • 査読あり
  • [学会発表] 細胞死のプログラムの解読 死のシグナルから死の実行まで

    • 著者名/発表者名
      刀祢重信
    • 学会等名
      鹿児島大学第1回分子病態学セミナー
    • 発表場所
      鹿児島大学(鹿児島市)
    • 招待講演
  • [学会発表] アポトーシスにおける核凝縮の3つの素過程 リング、ネックレス、核崩壊をそれぞれ誘導する因子の解析

    • 著者名/発表者名
      刀祢重信, 杉本憲治, 網代廣三, 栗林太
    • 学会等名
      第21回 日本Cell Death 学会
    • 発表場所
      名古屋大学(名古屋市)
  • [学会発表] アポトーシスにおける核凝縮の3つの素過程 リング、ネックレス、核崩壊をそれぞれ誘導する因子の解析 - Cell-free系を用いて

    • 著者名/発表者名
      刀祢重信, 杉本憲治, 網代廣三, 栗林太
    • 学会等名
      第35回日本分子生物学会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡市)
  • [学会発表] Analysis of factors involving three distinct stages during apoptotic nuclear condensation using a cell-free system

    • 著者名/発表者名
      Tone S, Sugimoto K, Ajiro K, Kuribayashi F
    • 学会等名
      52th American Society for Cell Biology (ASCB )
    • 発表場所
      Moscone Center (サンフランシスコ, USA)

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公開日: 2014-07-24  

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