研究課題/領域番号 |
23570084
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研究機関 | (財)東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
市川 眞澄 (財)東京都医学総合研究所, 基盤技術研究センター, 副参事研究員 (20124414)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 副嗅球 / ニューロン / 鋤鼻系 / 電子顕微鏡 / 可塑性 |
研究概要 |
鋤鼻系はフェロモンの受容、情報処理をおこない、生殖をはじめとする社会行動に関係し、動物にとって重要な神経路である。これまでに、交尾刺激を受け、フェロモンの記憶の形成時に、副嗅球相反性シナプスが形態変化を起こすことを電子顕微鏡的に明らかにした。シナプス可塑性のメカニズムをさらに詳細に検討するために、記憶したニューロンを特定して解析するため以下の研究を行った。 フェロモンの刺激を受けて、活動が高まったニューロン、すなわちフェロモン記憶ニューロンを標識可視化する目的で、c-fos-GFP-GluR1トランスジェニックマウスの導入し、交尾した際に標識物質であるc-fos-GFP-GluR1の定量的検討を行った。雌を交尾させ、24時間後に副嗅球の標本を作製する。副嗅球スライスをGFPあるいはGluR1の抗体を用いて、免疫組織学的に標識ニューロンを可視化し、標識量を検定している。電子顕微鏡観察に可能なレベルまで、標識量を上げることが出来るようになった。 記憶ニューロンと同定したMT細胞および顆粒細胞樹状突起上のシナプスについて電子顕微鏡を用いて観察するための準備として、シナプス膜肥厚・棘突起(スパイン)のサイズ等を計測するための三次元構築を試みた。色素を細胞内注入することにより可視化した樹状突起上のシナプスの解析を行い三次元構築の有用性を確認している また、これまで我々が開発してきた、培養系を利用することにより標識されたニューロン上のシナプスのリアルタイムイメージングをさらに精度を高め、記憶に関わるシナプスの動的変化について解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フェロモンの刺激を受けて、活動が高まったニューロン、すなわちフェロモン記憶ニューロンを標識可視化する目的で、c-fos-GFP-GluR1トランスジェニックマウスの雌を交尾させ、24時間後に副嗅球スライスをGFPあるいはGluR1の抗体を用いて、免疫組織学的に標識ニューロンを可視化した。この際、蛍光顕微鏡で蛍光像を観察し記憶ニューロンを特定することを試みた。しかしながら、当初の想定より標識量が少なく、電子顕微鏡の観察レベルに至らなかった。いくつかの工夫をすることにより、年度末になってほほ電子顕微鏡の観察に適するレベルまで上げることができた。したがって、当初の計画より半年ほど遅れている。 一方、同定したMT細胞および顆粒細胞を目的とするニューロン樹状突起のシナプスについて電子顕微鏡を用いて観察するための三次元構築の手法を確立した。色素を細胞内注入することにより可視化した樹状突起上のシナプスの解析を、三次元構築しておこない、シナプス膜肥厚・棘突起(スパイン)のサイズ等を計測することが可能となった。予定通りの進展である。 鋤鼻器と副嗅球ニューロンの共培養を確立し、さらに、培養副嗅球ニューロンのうち顆粒細胞をリポフェクション法によりGFPでニューロンを標識し、ニューロンの樹状突起およびシナプスの動態について共焦点レーザー顕微鏡を用いてリアルタイムイメージングにより解析する手法も確立した。ノルアドレナリンで薬理学的にニューロンを興奮すると、その反応性においていくつかのパターンを示すことが明らかになり、スパインの動態とノルアドレナリンとが相関性を示唆する結果を得ている。予定通り順調な進展である。
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今後の研究の推進方策 |
フェロモンの刺激を受けて、活動が高まったニューロン、すなわちフェロモン記憶ニューロンを標識可視化する目的で、c-fos-GFP-GluR1トランスジェニックマウスの雌を交尾させ、24時間後に副嗅球の標本を作製する。副嗅球スライスをGFPあるいはGluR1の抗体を用いて、免疫組織学的に標識ニューロンを可視化する。この際、蛍光顕微鏡観察と電子顕微鏡観察を同一ニューロンでおこなうことを可能にするため、蛍光物質と金粒子を用いて可視化する。蛍光像を観察し記憶ニューロンを特定する。ニューロンの形態を同定したMT細胞および顆粒細胞を区別した後、目的とするニューロン樹状突起のシナプスについて電子顕微鏡を用いて観察する。シナプス膜肥厚・棘突起(スパイン)のサイズ等を計測する。記憶ニューロンと非記憶ニューロンのシナプスを比較解析することにより、記憶ニューロンのシナプスに特異的に起こる変化を明らかにする。また、変化した可塑性シナプスの樹状突起上の分布局在を解析する。最終的には、交尾にともなって記憶形成時に起こるシナプスの形態変化を総合的に解析し、記憶に関わるシナプスの可塑的形態変化を明らかにする c-fos-GFP-GluR1マウスの鋤鼻器―副嗅球ニューロン共培養系に、フェロモン物質およびノルアドレナリン等を薬理学的に投与する。この刺激にともなって活動するニューロンをGFPの発現で特定し、このニューロンの変化、特にシナプス形成部位であるスパインのリアルタイムイメージングをおこなう。交尾刺激は青斑核からのノルアドレナリン(NA)線維によって情報が運ばれる。したがって、フェロモンを鋤鼻器に同時にNAを副嗅球ニューロンに刺激することにより交尾刺激と同等の刺激を培養系でおこなう。この刺激にともなって起こる変化を解析し、記憶に関わるシナプス変化の動態を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度は、計画の一部の進展が予定通りでなかったため、研究費の使用の執行が計画より少なくなってしまった。次年度は、この遅れを取り戻すべく研究計画を立てている。従って、次年度は、初年度の繰り越しも含めて、2300千円が、予算として計画している。この研究費のほとんどは、実験のための消耗品である。内訳は、試薬等(免疫染色のための抗体及び試薬、培養のための試薬)が1200千円、実験器具(シューレ、チップなど実験用プラスチック製品)に600千円を使用する。旅費は、代表者および連携研究者が学会発表のため国内旅行(2回)の費用に300千円使用する謝金は論文校閲代100千円、その他印刷代100千円使用する。
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