研究課題/領域番号 |
23570084
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
市川 眞澄 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基盤技術研究センター, 副参事研究員 (20124414)
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キーワード | 副嗅球 / ニューロン / 鋤鼻系 / 電子顕微鏡 / 可塑性 / フェロモン |
研究概要 |
フェロモンの記憶機構を解析するため、マウス鋤鼻系を利用している。鋤鼻系はフェロモンの受容、情報処理をおこない、生殖をはじめとする社会行動に関係し、動物にとって重要な神経路である。これまでに、交尾刺激を受け、フェロモンの記憶の形成時に、鋤鼻系の第1次中数の副嗅球に存在する相反性シナプスが形態変化を起こすことを電子顕微鏡的に明らかにした。記憶とシナプス可塑性との関わりをさらに詳細に検討するために、記憶に関わるニューロンを標識して解析するため以下の研究を行った。 交尾時に、活動が高まったニューロン、すなわちフェロモン記憶ニューロンを可視化する目的で、c-fos-GFP-GluR1トランスジェニックマウスを導入し、交尾した際に標識物質であるc-fos-GFP-GluR1の可視可の検討を行った。雌を交尾後に副嗅球をGFPの抗体を用いて、免疫組織学的に標識ニューロンを可視化し、電子顕微鏡観察で標識ニューロンの解析を試みた。 記憶ニューロンを光学的に蛍光像で同定した後、同一のMT細胞および顆粒細胞の樹状突起上のシナプスについて電子顕微鏡を用いて解析を試みた。 また、これまで我々が開発してきた、培養系を利用することにより標識されたニューロン上のシナプスのリアルタイムイメージングをさらに精度を高め、記憶に関わるシナプスの動的変化について解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フェロモンの刺激を受けて、活動が高まったニューロン、すなわちフェロモン記憶ニューロンを標識可視化する目的で、c-fos-GFP-GluR1トランスジェニックマウスの雌を交尾後、免疫組織学的にGFPの交代を用いて標識ニューロンを可視化した。この際、蛍光顕微鏡で蛍光像を観察し記憶ニューロンを特定することを試みた。特定したニューロンを電子顕微鏡で解析した。この結果、樹状突起における標識レベルが少ないため、電子顕微鏡で定量的計測に困難が伴う。標識レベルを高めるべく検討を進めている。 一方、同定したMT細胞および顆粒細胞樹状突起のシナプスについて電子顕微鏡を用いて観察するための三次元構築の手法を確立し、試験的にシナプス膜肥厚・棘突起(スパイン)のサイズ等を計測した結果をオンラインジャーナル(Frontiers in Neuroanatomy)で公開の準備をした(平成25年公開予定)。 鋤鼻器と副嗅球ニューロンの共培養を確立し、さらに、培養副嗅球ニューロンのうち顆粒細胞をリポフェクション法によりGFPでニューロンを標識し、ニューロンの樹状突起およびシナプスの動態について共焦点レーザー顕微鏡を用いてリアルタイムイメージングにより解析した。スパインの動態とノルアドレナリンとが相関性を解析した結果、ノルアドレナリンはスパインの動きを安定させる効果を有することがわかった。予定通り順調な進展である。
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今後の研究の推進方策 |
フェロモンの刺激を受けて、活動が高まったニューロン、すなわちフェロモン記憶ニューロンを標識可視化する目的で、c-fos-GFP-GluR1トランスジェニックマウスの雌を交尾させ、免疫組織学的に標識ニューロンを可視化する。この際、蛍光物質と金粒子を用いて可視化することで蛍光顕微鏡観察と電子顕微鏡観察を同一ニューロンでおこなうことを可能にする。今後、蛍光像を観察し記憶ニューロンを特定し、ニューロンの形態を同定したMT細胞および顆粒細胞を、ニューロン樹状突起のシナプスについて電子顕微鏡を用いて詳細に観察する。シナプス膜肥厚・棘突起(スパイン)のサイズ等を計測する。記憶ニューロンと非記憶ニューロンのシナプスを比較解析することにより、記憶ニューロンのシナプスに特異的に起こる変化を明らかにする。また、変化した可塑性シナプスの樹状突起上の分布局在を解析する。最終的には、交尾にともなって記憶形成時に起こるシナプスの形態変化を総合的に解析し、記憶に関わるシナプスの可塑的形態変化を明らかにする c-fos-GFP-GluR1マウスの鋤鼻器―副嗅球ニューロン共培養系に、フェロモン物質およびノルアドレナリン等を薬理学的に投与する。この刺激にともなって活動するニューロンをGFPの発現で特定し、このニューロンの変化、特にシナプス形成部位であるスパインのリアルタイムイメージングをおこなう。ノルアドレナリンはスパインの動きを安定させる効果を有することがわかったので、さらに詳細NA刺激にともなって起こる変化を解析し、記憶に関わるNAとシナプス変化の動態を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度は、計画の一部の進展が予定通りでなかったため、研究費の使用の執行が計画より少なくなってしまった。次年度は、この遅れを取り戻すべく研究計画をおこなってほぼ計画通りに進み、費用も予定通り使用した。最終年度は、最終年度交付額1100千円および繰り越しも含めて、約1900千円が、予算として計画している。 この研究費のほとんどは、実験のための消耗品である。内訳は、試薬等(免疫染色のための抗体及び試薬、培養のための試薬)が800千円、実験器具(シューレ、チップなど実験用プラスチック製品)に500千円を使用する。 旅費は、代表者および連携研究者が学会発表のため国内旅行(それぞれ2回)の費用に400千円使用する謝金は論文校閲代100千円、その他印刷代100千円使用する。
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