研究課題
フェロモンの記憶機構を解析するため、マウス鋤鼻系を利用している。鋤鼻系はフェロモンの受容、情報処理をおこない、生殖をはじめとする社会行動に関係し、動物にとって重要な神経路である。これまでに、交尾刺激を受け、フェロモンの記憶の形成時に、鋤鼻系の第1次中枢の副嗅球に存在する相反性シナプスが形態変化を起こすことを電子顕微鏡的に明らかにした。記憶とシナプス可塑性との関わりをさらに詳細に検討するために、記憶に関わるニューロンを標識して解析した。ドキシサイクリン(Dox)依存的および神経活動依存的にGFP-GluR1を発現するトランスジェニックマウス(GFP-GluR1c-fos)を用いて実験を行なった。 Dox経口投与下で飼育したメスのGFP-GluR1c-fosマウスを、Dox投与を停止してから交尾を行なわせた。交尾確認4時間後にオスマウスを引き離し、12時間経過後再びDox経口投与を開始する事で、交尾に関連したc-fos活性ニューロンのみをGFP-GluR1でラベルした。3日目にサンプリングを行ない、抗GFP抗体を用いて免疫電子顕微鏡試料を作成した。そして、副嗅球の投射ニューロンである僧帽/房飾(MT)細胞樹状突起上の相反性シナプスを観察した。GFP陽性MT細胞は、副嗅球尾側中央部に多く存在した。その中でもGFP陽性MT細胞とGFP陰性MT細胞があるため、前者を記憶ニューロン、後者を非記憶ニューロンと仮定し、それぞれの樹状突起上の相反性シナプス(40~50)を計測したところ、GFP陽性ニューロン上に存在するシナプスの方が大きい傾向にあった(陽性シナプス288.7±0.3 nm、陰性266.4±0.3nm)。サンプル数がまだ少ないため、現時点では明確な結論を出す事が出来ないが、これまで個体間で見られたシナプス変化がニューロンレベルでも確認できることが明らかになった。
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