研究課題
母体由来の内分泌ホルモンは、初期胚発生や胚の内分泌器官が機能開始するまでのホメオスタシス維持に貢献していると考えられている。しかし、具体的な作用メカニズムの多くは不明である。本研究では、メダカ受精卵に下流遺伝子を活性化するに十分量のアンドロゲン(11KT)を検出し、アンドロゲン受容体(AR)遺伝子機能阻害により生じるメダカ個体レベルの表現型解析を行った。ARに対する Morpholino oligo (MO)導入胚では、赤血球減少・血管走行異常が認められた。マイクロアレイ解析、アンドロゲン標的候補遺伝子群のmRNA注入実験により、AR機能阻害胚では、Bmpシグナルの活性化、Wntシグナルの抑制により、血液血管内皮細胞前駆細胞分化因子の発現が抑制されている可能性が示された。また、Dominant-negative AR (DN-AR) の発現をHeat shock誘導し、初期胚期のアンドロゲン応答期を解析した結果、原腸胚期から初期胚一次造血開始過程でDN-ARを発現させると、AR MO導入胚と同様の表現型が誘導された。さらにアンドロゲン応答細胞の分化系譜解析から、血管内皮細胞および血液細胞にアンドロゲン応答性の細胞を検出した。メダカTilling libraryからAR変異体を複数系統単離し、表現型解析を行った結果、母性由来のAR mRNAが初期胚発生に寄与していることを示す結果を得た。新たに単離に成功したナンセンス変異系統、TALEN法によるAR変異体を用いた解析を進めている。以上の結果から、これまで性分化因子として知られていたアンドロゲンが、メダカ初期胚血液血管前駆細胞分化に重要な役割を果たすことが明らかとなった。一方で、二次性徴発現過程との比較解析からWnt, Bmpシグナルのアンドロゲン応答性下流エフェクター因子としての重要性を明らかとした。
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