研究課題/領域番号 |
23570089
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐藤 成樹 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 講師 (40261896)
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キーワード | ミオシン結合タンパク質 / C-タンパク質 / MyBP-C / 横紋筋 / 収縮制御 |
研究概要 |
本年度はマウスの心筋型、速筋型および遅筋型C-タンパク質のN端側フラグメントを大腸菌発現系により作成し、F-アクチンへの結合の生理的意味を考察した。 まず、C-タンパク質の3種アイソフォーム間のF-アクチンに対する結合能力の違いをF-アクチンとの共沈実験で解析した。その結果、C-タンパク質のN端側フラグメントはアクチン1モル当たりに心筋型が約0.45モル、速筋型が約0.6モル、遅筋型が約0.35モルの割合で結合が飽和し、結合の強さは速筋型、心筋型、遅筋型の順に弱くなるという傾向を明らかにした。次に、アクチン束化活性を測定した。また、アイソフォーム間のミオシン線維への結合能を共沈実験により解析した。さらに、C-タンパク質アイソフォーム間でN端側領域がアクチン-ミオシン相互作用にどのような影響をもたらすのかを、C-タンパク質フラグメント存在下でのアクトミオシンATPase活性を測定することで比較した。これらの結果、アクチン束化活性、ミオシンへの結合能が最も高いのは速筋型であり、アクトミオシンATPase活性も速筋型が最も上昇させることが明らかになった。これらのことは、C-タンパク質がそのN端側領域でF-アクチンと結合することでアクチン-ミオシン相互作用に影響を与え活性化することを示唆した。 昨年度脊椎動物だけでなく、原索動物尾索類カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)にC-タンパク質と考えられる遺伝子が存在することを明らかにした。今年度は組み換え体を作製してアクチンへの結合を解析した。その結果、マウスと同様にカタユウレイボヤC-タンパク質もN端側領域でF-アクチンに結合し、束化することが明らかになった。このことはアクチンに対する結合が、種を超えてC-タンパク質の基本性質であることを示し、非常に重要な機能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は(1)C-タンパク質による制御機構が脊椎動物への進化の過程でいつ獲得されたのか、及びその生理特性を明らかにすること、(2)C-タンパク質による横紋筋収縮制御のメカニズムを分子レベルで解明し、収縮システムの基本構造を明らかにするである。今年度は(2)の研究に重点を置いて、C-タンパク質のアクチン結合を解析し、筋収縮に及ぼすC-タンパク質の生理的意義を考察した。また、(1)の研究に関してはカタユウレイボヤC-タンパク質の組み換え体を作製してその機能を解析することで、アクチン結合が種を超えて保存された重要な機能であることを明らかにした。これらの研究の成果は日本動物学会第83回大会(大阪)にて発表した。論文については、現在作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)引き続き、カタユウレイボヤC-タンパク質の機能とその構造の関係を分子細胞生物学的手法により解析し、脊椎動物のものと比較検討する。特にミオシン結合部位を同定しその機能を明らかにする。また抗体を作製し、その局在様式を明らかにする。 (2)新規に作成する抗体を活用して原索動物頭索類においてC-タンパク質が存在するのかを明らかにする。存在すれば、遺伝子を単離して同定する。 (3)C-タンパク質による横紋筋収縮制御の分子メカニズムの解明するため、全てのアイソフォームでN端側領域のアクチン結合部位を決定する。次にアクチン-ミオシン相互作用に対してC-タンパク質が与える影響をin vitro motility assayにより解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子工学用の試薬、生理学実験用の試薬のほかプラスティック器具などの物品費として90万円を使用する。旅費は国内2回を予定しており、10万円使用する。外国論文の校閲として謝金を5万円、その他研究成果投稿料として5万円使用する。合計で110万円使用する。
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