研究課題/領域番号 |
23570092
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田守 正樹 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (50236767)
|
研究分担者 |
山田 章 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所バイオICT研究室, 主任研究員 (80359075)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 生理学 / 動物 |
研究概要 |
棘皮動物はキャッチ結合組織と呼ばれるコラーゲンを主成分とする刺激によって硬さがかわる結合組織を持つ。この棘皮動物に独特の結合組織の硬さ変化の機構をタンパク質分子レベルで解明することを目指し研究を開始した。材料にはキャッチ結合組織であるナマコの体壁真皮を用いた。研究開始時には、まず粗分画標本のみが得られている「新規硬化因子」を高純度で精製することを目指したが、これは困難であることがわかったので、この実験は現在、一時休止している。次に実体がまったくわかっていなかった軟化因子の精製に着手した。軟化因子の精製には硬化因子の精製に用いたニセクロナマコの真皮の他に、強い力学刺激に反応して著しく軟化することが知られているシカクナマコの真皮も用いた。これまでの研究で、陰イオン交換クロマトグラフィーとゲル濾過クロマトグラフィーを組み合わせることによって、シカクナマコの真皮から軟化活性のある粗分画標本が得られるようになった。真皮の「硬さ」は動的力学試験で測定し、動的力学試験には細胞を破壊した真皮のTritonモデルを用いた。正常人工海水中にある真皮のTritonモデルに試料を加え、試料の添加が「硬さ」変化をおこすかどうか調べた。また実験には従来よりも容量の小さい50 microlの容器を用いた。細胞外基質に作用する軟化因子の実体に迫ることができたのは本研究の成果であり、キャッチ結合組織の硬さ変化の機構の解明に一歩近づいたといえる。今後は軟化因子の精製をさらに進めるとともに、その作用機構も明らかにしていきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初は、まず粗分画標本のみが得られている「新規硬化因子」を高純度で精製することを目指したが、これは困難であることがわかった。そこで次に実体がまったくわかっていなかった軟化因子の精製に着手した。材料としては、これまで硬化因子の精製に用いたニセクロナマコの真皮の他に、強い力学刺激に反応して著しく軟化することが知られているシカクナマコの真皮も用いた。現在、陰イオン交換クロマトグラフィーとゲル濾過クロマトグラフィーを組み合わせることによってシカクナマコの真皮から軟化活性のある粗分画標本が得られるようになった。 また研究開始当初は生きた細胞を含むfresh dermisを使用していたが現在はTriton X100で細胞を破壊した真皮(Tritonモデル)を使用している。真皮のTritonモデルについては過去にニセクロナマコでは報告があったがシカクナマコの真皮では用いられていなっかったので、ニセクロナマコで使われていた方法を改良してシカクナマコの真皮のTritonモデル作製法を確立した。 さらに研究開始当初は容量150 microlの容器を使って力学試験をおこなっていたが、現在は総容量50 microlの容器での力学試験が可能となった。 現在まで「新規硬化因子」を高純度で精製するという当初の目的は達成されていないが、別の因子である軟化因子の精製は進んでおり、実験に必要な手法の開発も進んでいるので研究は、おおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
粗分画標本が得られているシカクナマコの軟化因子については、高純度のものを得るための精製法を確立する。高純度のものが得られれば、軟化因子がポリペプチドであるかどうかを明らかにする。ポリペプチドであることが確かめられれば、その全配列の解読をめざす。また軟化因子の作用機構の解明も進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
物品費、旅費以外の費目については、おおむね、過去の申請書に記した額を使用する。次年度に使用する予定の研究費は物品費と旅費にあてる。物品費については24年3月に発注したが、23年度中に納入されなかったものがあるので、その分を次年度に使用する。旅費については、研究打ち合わせのための出張予定を23年度の末から次年度に延期したので、その分を次年度に使用する。
|