研究課題/領域番号 |
23570094
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
森下 文浩 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20210164)
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キーワード | アメフラシ / 神経ペプチド / D型アミノ酸 / 翻訳後修飾 / 遺伝子導入 |
研究概要 |
軟体動物腹足類アメフラシ(Aplysia kurodai)の心拍動増強ペプチドであるNdWFamideは、D型トリプトファンをもつユニークな構造の神経ペプチドである。本研究は翻訳後修飾の過程でNdWFadmieのトリプトファンをD型化する酵素、ペプチドイソメラーゼを分子生物学的手法で同定することを目的としている。前年度までにサブトラクション法により、アメフラシ腹部神経節中でNdWFamideを発現するRUQニューロンに特異的なcDNAを調製した。そして、それらを配列分析して相同性検索により帰属を明らかにしてきた。 今年度はさらにRUQニューロン特異的cDNAの同定を進めるため、最終的に72個のcDNAを配列分析した。そのうち43個は相同性検索により相同性が高いものが見つかった。既知の神経ペプチド・ペプチドホルモンをコードするものが15個、V-ATPaseなどを含む酵素をコードするものが5個、リボソームタンパク質をコードするものが9個含まれていた。また21個は相同性の高いものが見つからなかったが、コードするタンパク質のN末端にシグナルペプチドが見られないため、イソメラーゼ遺伝子ではないと判断した。これらのcDNAを除き、最終的にイソメラーゼ候補遺伝子と判定されたものは3個に絞られた。 さらに、これらの候補遺伝子を培養細胞に発現させて活性検定するため、CMVプロモーターをもつFlexi vector system (Promega)に組み込んだ。合わせて、NdWFamide前駆体をコードするcDNAも同様に発現ベクターに組み込んだので、今後、これらを培養細胞に発現させ、イソメラーゼ活性を検定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、候補遺伝子を培養細胞系に発現させて活性を調べるため、完全なopen reqding frameを含むcDNAを取得する必要がある。サブトラクション法で取得したRUQニューロン特異的cDNAの中には3'-領域の断片が多く含まれていたため、5'-RACE法により完全長のcDNAをクローニングする必要があった。この作業に想定以上の時間を要したため、当初の計画よりやや遅れて進行している。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で3つの候補遺伝子が見つかっているので、計画通り、培養細胞系に発現させて活性の有無を確認する。その方法は、1) 候補遺伝子とNdWFamide前駆体遺伝子を共発現させ、D型トリプトファンをもつNdWFamideが産生されるかどうかを確かめる方法、2) 候補遺伝子を発現させて粗酵素標品を調製し、化学合成した前駆体タンパク質の一部を基質としてin vitroで活性を検定する、という2つのアプローチを想定している。 酵素活性が確認できた場合は、実際にNdWFamide発現ニューロンに共発現しているか、基質特異性・反応速度などの酵素学的解析を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
発現実験に用いる培養細胞や培養に必要な器具・試薬類、遺伝子導入に用いるリポソームなどを消耗品費(600,000円)にて購入する。 成果発表のための旅費として100.000円、英文校閲などの謝金として50,000円、研究成果投稿料などその他経費として50,000円を充てる。
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