研究課題/領域番号 |
23570097
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大日方 昂 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 名誉教授 (40012413)
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研究分担者 |
佐藤 成樹 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 講師 (40261896)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞・組織 / 生体分子 / 蛋白質 / 生理活性 / 運動 |
研究概要 |
クマムシ非横紋筋細胞のトロポニンについて:抗トロポニンI(TnI)抗体を用いた染色によりTnIが咽頭部を除くからだ全域の非横紋筋細胞のアクチン線維ネットワークに存在することを明らかにした。咽頭部の非横紋筋細胞には、抗原性が異なるTnIアイソフォームがあると推測した。クマムシのホモジェネートから、ATP,EGTAを含む弛緩溶液によりTnIをもつアクチン線維が解離することを見いだし、遠心分離法によりこのアクチン線維を分離、Western blotによりTnIバンドを同定した。材料の量的な制約の故、これ以上の解析はできなかったが、成果を論文発表した。 無脊椎動物非横紋筋のトロポニンの分離、機能解析等についての比較生理化学的研究法を、これまでの研究実績、研究経験に基づいてとりまとめ、考察して論文としてまとめて発表した。 ナマコのアクチン線維の分離と構成タンパク質の解析:ナマコの体壁を構成する非横紋筋から天然アクチン線維を分離、SDS-PAGE解析、このアクチン線維にはトロポニンやトロポミオシンに相当するバンドは検出されなかった。ナマコの体壁非横紋筋にはトロポニンがない可能性が示唆されるが、次年度、方法を改善して更に検討することにした。 線虫のカルポニン様タンパク質(UNC-87)の機能特性:カルポニンは脊椎動物非横紋筋に存在するアクチン結合タンパク質で、アクチン-ミオシン相互作用の制御因子として働く。線虫にはこれと構造的ホモロジーがあるUNC-87(アクチン結合タンパク質)が存在する。無脊椎動物でのトロポニンによる収縮運動の制御に影響を与える可能性があるので、UNC-87の機能特性を解析した。その結果、UNC-87はアクチンに結合するのみならず、ミオシンにも結合し両者を架橋、アクチン-ミオシン相互作用に抑制的に作用するという特異な機能をもつことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微小動物であるクマムシの非横紋筋のアクチン線維にトロポニンが存在することを明確に示し、更に低Caイオン濃度、ATPにより収縮運動装置からアクチン線維が解離することから、トロポニンがこの非横紋筋細胞の運動制御に関与することを示唆できたのは大きな成果である。しかし、材料の量的制約から、トロポニンの機能特性の解析は出来なかった。 扁形動物(プラナリア)の非横紋筋細胞からアクチン線維の分離には成功したが、内在するプロテアーゼのためにトロポニンが分解されるようで、アクチン線維のミオシンとの相互作用のカルシウム依存性は十分認められず、方法論の改善の必要性が明らかになった。 ほ乳類筋上皮細胞のトロポニンについては種々の抗体をテストしたが、適切に機能する抗体が手元になく、購入した物も上手く機能せず、研究は停滞した。
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今後の研究の推進方策 |
1)扁形動物(プラナリア)非横紋筋トロポニンをデータベースの情報に基づいて組み替えタンパク質として作成、抗体を作成して組織内局在パターンを調べるとともに、機能特性を解析する。2)ほ乳類筋上皮細胞のトロポニンを解析するための新たな抗体を探索する。抗体があれば、直ちに免疫組織化学的方法論で筋上皮細胞におけるトロポニンの存在の有無、存在パターンを明らかにする。3)海産無脊動物(ナマコなど)のアクチン線維を分離するための適切な溶液条件を検討する。4)海外研究協力者の協力のもとに、線虫トロポニンを組み替えタンパク質として作成、機能特性を解析する。5)海外研究協力者の協力のもとに、線虫非横紋筋細胞でアクチンーミオシン相互作用に関与するカルポニン類似タンパク質(UNC-87)とトロポニンとの機能的な関わりを解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、ほとんど物品費と旅費として使用する。物品費は実験用の器具類(消耗品)及び試薬類(消耗品)の購入である。旅費については、海外研究協力者との共同研究(線虫のトロポニンおよびカルポニン類似タンパク質の機能特性の解析)および研究成果の国際学会での発表のために海外出張を予定しているので、このために海外出張旅費として使用する。また、日本国内の学会で成果を発表するとともに研究討議するので、国内出張旅費として一部を使用する。
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