研究課題/領域番号 |
23570097
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大日方 昂 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 名誉教授 (40012413)
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研究分担者 |
佐藤 成樹 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 講師 (40261896)
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キーワード | トロポニン / トロポミオシン / カルポニン様蛋白質 / アクチン / ミオシン / ナマコ / 線虫 / ウミユリ |
研究概要 |
1)棘皮動物ナマコ筋のアクチン線維の構成蛋白質の解析(前年度から継続):ナマコの体壁筋(非横紋筋)から分離条件を修正して天然アクチン線維を分離し、SDS-PAGEで解析した。このアクチン線維にトロポミオシン(TM)相当のバンドは検出されるが、トロポニン(TN)相当のバンドは検出されない。TMと思われるバンドは尿素存在下で特異的に移動度が低下するというTMの特性ももつことが確認された。分離アクチン線維はミオシンATPaseを活性化させるが、Caイオンの存在の有無により影響されないので、機能面からもTNの存在は否定された。ナマコの筋にはトロポニンがないと見なされる。棘皮動物の中で最も原始的位置にあるウミユリ(トリノアシ)の筋(構造的には平滑筋)からアクチン線維を分離し解析した。この場合も、TMは検出されたがTN相当バンドは検出されず、機能特性の面からもTNの存在は否定された。ウニ平滑筋がトロポニンを欠くことは既にわかっている(Obinata et al, 1974)。従って、棘皮動物全般にTNが欠損しているとの結論に至った。 2)線虫のカルポニン様タンパク質(UNC-87)の機能特性:無脊椎動物でのトロポニンによる収縮運動(アクチン-ミオシン相互作用)の制御に影響を与える可能性があるので、前年度に続き、UNC-87の機能特性を解析した。今年度は線虫ミオシンを調製し調べた。その結果、UNC-87はアクチンおよびミオシンに結合し両者を架橋、アクチン-ミオシン相互作用に抑制的に制御するという特異な機能を確認した。 3)コフィリン(CF)と運動装置の形成:トロポニンをアクチン線維を局在化させるトロポミオシンはCFと競合する作用があるので、運動装置の形成でのコフィリンの役割を検討、CFが必須の役割を果たすことを解明した。CFのアクチン線維への局在はUNC-87とは競合しない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)非横紋筋のモデルとして取り上げた微小動物クマムシの非横紋筋で、アクチン線維にトロポニン成分の存在をイムノブロット法で検出し、また、トロポニ含有アクチン線維が解離させる既知の条件(低Caイオン濃度、ATP存在)でアクチン線維が解離することからトロポニンの存在を確認、トロポニンがこの非横紋筋細胞の運動制御に関与することを示唆できたのは大きな成果である。 2)これまで棘皮動物ウニの筋(平滑筋)にトロポニンはないと結論されているが、トリノアシ筋、ナマコ筋でトロポニンの不在を確認、後口動物の進化過程で、棘皮動物全般にトロポニンは欠損、原索動物(ナメクジウオ、ホヤ)で初めてトロポニンが出現するという結論に至った。 3)扁形動物(プラナリア)の非横紋筋細胞からアクチン線維の分離には成功したが、内在するプロテアーゼに妨げられ、トロポニンの解析(局在および機能解析)は滞っている。プラナリアのトロポニンは組み替え体蛋白質を用いる方法論に切り替えて進みつつある。次年度に成果が得られるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
1)扁形動物(プラナリア)非横紋筋トロポニンを組み替えタンパク質として作成、抗体を作成して組織内局在パターンを調べるとともに、機能特性を解析する。 2)トロポニンをもつ原索動物とトロポニンをもたない棘皮動物との中間に位置する半索動物ギボシムシの非横紋筋について、トロポニンの有無を解析、あれば局在、機能特性を解析し、後口動物の進化とトロポニン他の蛋白質の発現の関連を明らかにする。 3)海外研究協力者の協力のもとに、非横紋筋に存在する線虫トロポニンを組み替えタンパク質として作成、機能特性を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、ほとんど物品費および旅費として使用する。 物品費は実験用の器具類(消耗品)及び試薬類(消耗品)の購入にあてる。 旅費については、海外研究協力者との共同研究(線虫トロポニンの解析)および研究成果の国際学会での発表のための海外出張旅費として使用する。また、日本国内の学会での成果発表と研究討議のため、国内出張旅費としても使用する。
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