研究課題
1. 卵巣におけるホヤバソプレシン受容体の局在解析受容体は生理活性ペプチドの標的部位であり、受容体の局在位置や発現時期を特定することは、そのペプチドの生理機能を解明することに必須である。申請者はカタユウレイボヤから卵巣を摘出し、ホヤバソプレシン受容体抗体を用いた免疫染色実験を行うことで、同受容体の局在を決定しようと試みた。その結果、ホヤバソプレシン受容体が卵黄形成期のテスト細胞に局在していることが示された。2. 卵巣へのホヤバソプレシン投与による遺伝子発現変動解析カタユウレイボヤ成体の卵巣は直径 1cm 程の嚢状の組織であることから、単離摘出することや等分に分割することが容易である。この特徴はマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析に有効であり、本解析により卵巣でホヤバソプレシンが発現誘導する遺伝子を特定することが期待された。このマイクロアレイ解析の結果、数十種類の発現変動遺伝子候補を検出したが、再現性等に問題があり、発現変動遺伝子の特定を現在も進めている。3. 卵巣形態形成におけるホヤバソプレシンの遺伝子発現・動態解析卵黄形態形成期におけるホヤバソプレシン遺伝子の発現様式を観察するために、ホヤバソプレシン遺伝子のプロモーター領域の下流に蛍光タンパク質遺伝子を導入したトランスジェニックホヤを作製した。このホヤでは原理上、ホヤバソプレシン遺伝子のプロモーター領域が活性化されれば下流の蛍光タンパク質遺伝子が発現するので、同プロモーターの活性化を蛍光シグナルの観察により追跡することができる。このトランスジェニックホヤを観察したところ、成長過程の卵巣において蛍光シグナルが検出された。本結果は卵巣形態形成へのホヤバソプレシンの関与を示唆している。
3: やや遅れている
卵巣へのホヤバソプレシン投与による遺伝子発現変動解析が当初の計画通りに進捗していない。ホヤのアレイチップ上の遺伝子数が少ないためにマイクロアレイ実験結果の確実性が落ちること、ホヤ卵巣に内在するホヤバソプレシンが引き起こす反応を阻害しきれないことなどが、安定した結果を得られない要因として考えられる。一方、ホヤバソプレシン受容体の局在解析やトランスジェニックホヤの作製に関しては、概ね順調に進んでいる。
遺伝子発現変動解析で安定した結果を得るために、ホヤバソプレシンを投与した卵巣とアンタゴニストを投与した卵巣を比較したいと考えている。そのためにはホヤバソプレシン受容体のアンタゴニストを探索する必要があり、その探索を新たに今年度の研究計画に加えたい。それ以外の実験については、申請時の計画に沿って実験を遂行する。
上記のアンタゴニスト探索のために、オキシトシン受容体やバソプレシン受容体のアンタゴニストを複数種購入して、ホヤバソプレシン受容体の阻害活性検出を試みる。またホヤバソプレシンのアミノ酸を一部置換したアンタゴニスト候補ペプチドを作製するために、ペプチド合成試薬も購入する。
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