研究課題/領域番号 |
23570112
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
植田 邦彦 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (60184925)
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研究分担者 |
須山 知香 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (40464044)
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キーワード | ナガハシスミレ / カナダ / シマジリスミレ / オキナワスミレ / 分子データ |
研究概要 |
昨年度にはほとんど実施出来なかったので,今年度が実質的に初年度である。先ず,最大の主テーマの一つである極東以外での唯一の狭義のタチツボスミレ類である北米の(仮称)アメリカナガハシスミレをカナダで採取した。また日本のナガハシスミレの変異幅を認識するため,蛇紋岩変成として知られる,極めて限定された生育地にのみ見られるミヤマナガハシスミレの採取を北アルプスで行うとともに,兵庫県北部から鳥取県にかけての地域を中心にナガハシスミレの採取も行い,従来蓄積して来たデータに追加した。これらのデータを基に分子データ解析,染色体核型解析,および葉形解析等の形態データ解析を行った。その結果,従来はまったく同一分類群もしくは変種関係とされてきたナガハシスミレとアメリカナガハシスミレは大きく異なる分類群であり,独立種として扱う事が適当であるとの結論を得た。両者ともタチツボスミレ類であることは問題なかった。独立種であるとの見解は2度,学会で詳細に発表を行った。 国内での分布状況,変異幅の認識,海外産種の把握等を目的として,東京大学で数日に渡り,徹底的に関連全標本調査を行った。千葉中央博物館でも調査を行った。 広義のタチツボスミレ類と認識されている沖縄本島の極めて局限された場所からのみ知られているシマジリスミレの調査を行った。カナダ調査と同様に,スミレ属の専門家である猪狩雅史氏を研究協力者にあおぎ,現地での御案内を御願いし,そのおかげでもって無事に詳細に観察することができた。また,同じく極めて局限された生育地にのみ知られ,一見シマジリスミレに酷似するも柱頭の形態から別グループとされているオキナワスミレも同様に詳細に観察を行った。後者については沖縄県教育委員会の許可を正規に取得して行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度である昨年度は大震災の影響で研究費の配分遅れ,減額の可能性,使用の自粛依頼などがあり,春先の開花をのがすと野外調査の行えない本研究は実施が不可能であった。そのため,わずかに標本調査を行った程度であった。そのため,実質的に今年度が初年度として研究を行ったので,当初申請時の計画からは遅れているが,実質上は初年度分と一部2年目の調査研究を順調に行っている。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は,本来24年度に行うべき解析を行うとともに,本来の3年目の計画の一部を実施する。まず広義のタチツボスミレ類の概念を確定するため,ヨーロッパで従来の分類体系では広義の概念に入るとされている種を採取し,解析を行う。ナガハシスミレについては本年度中に論文を完成させ,投稿する。これまでに貯めて来た分子データをすべて再検討し,完成に向けて充足させる。 現在までの達成度で記したように25年度が実質的に2年目になるため,昨年度の未使用分の研究費を使用し,逆に今年度の予定研究費は,本来計画に入っていなかった26年度に延長を申請した上で,26年度に回して研究を継続し,26年度で研究を纏める。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記に述べた様に,24年度の未使用額を中心に使用し,25年度分はもっぱら26年度に回す予定である。25年度は主にヨーロッパ調査に大半の研究費が使用され,残りをすべて分子データ解析に用いる。
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