研究課題/領域番号 |
23570116
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
東 浩司 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50362439)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 花の匂い / GC-MS / モクレン科 / アケビ科 / ショウブ科 / 交雑 / 雑種 |
研究概要 |
アメリカサウスキャロライナ州において形態的に北方系統と南方系統の中間型と思われるヒメタイサンボク集団12ヶ所からサンプリング(合計120個体)を行い.葉緑体DNA約5000塩基を決定した結果、1集団のみが北方系のハプロタイプをもつ個体と南方系のハプロタイプをもつ個体の混在集団で、あとの11集団はすべて南方系のハプロタイプの個体の集団であった. アケビとミツバアケビの雑種であるゴヨウアケビの花の匂いの分析を行ったところ、質的にはアケビとミツバアケビの中間的であったが、匂いの放出量はアケビと比べてかなり少なかった.一部の個体では、極微量成分として親種の花の匂いとしては見られない匂い物質が見つかった.また、主要な匂い物質の組成比は個体によって大きく異なっていた.アケビは匂いが強く、ハナバチ類やハナカミキリ類が訪花しているのが観察されたが、ゴヨウアケビは匂いが弱いせいか、訪花昆虫はほとんど観察されなかった. セキショウ(ショウブ属)は普通に見られる系統のほかに、やや小型で開花期が少しずれる系統が知られており、両者は異なる分類群とされている.そこで、普通系統と小型系統の花の匂いの化学的特性に違いがないか調べた結果、違いは見られなかった.しかし、セキショウの花の匂いの主成分に関して、GC-MS・NMR解析を行った結果、これまで知られていない新規の化合物であることが判明したので、それについて学術誌にて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒメタイサンボクについては予定通り集団サンプリングを行い、葉緑体DNA解析を行った.形態的に中間的と思われる12集団からサンプリングしたが、結果としてはほとんどが南方系の集団であり、両者の混生集団は1ヶ所だけ見つかった.次年度にはより北側の集団のサンプリングを行う.アケビ属については予定通り雑種個体の調査解析を行った.
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今後の研究の推進方策 |
ヒメタイサンボクについては前年度同様にさらなる集団サンプリングを行い、形態形質だけでなく葉緑体および核DNA解析による交雑・混生集団の発見に努める.花の匂いの捕集は花の咲いているシーズン(年2週間程度)に限られるが、ヒメタイサンボクの場合、植物体(葉)の植物化学的特徴も北方系と南方系で異なっているという先行研究の存在が明らかになったので、交雑・混生集団の葉の化学成分を調べることで、間接的に花の匂いの特性が異なる個体・集団の存在を知ることができるのではないかと考え、これについても合わせて研究を行う.アケビとミツバアケビの雑種であるゴヨウアケビの花の匂い特性は概して両者の中間的であるが、親種と比べて個体間の変異が大きくことと、解析した個体数が少ないのでさらなるデータ収集を行う必要がある.
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度同様にアメリカサウスキャロライナ州における野外調査、国内野外調査を行い、さらなるデータ収集を行う.次年度は核マーカーの開発またはAFLP解析などと平行して、形態・化学成分の観点からも解析を行う.
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