研究課題/領域番号 |
23570117
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
長沼 毅 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (70263738)
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キーワード | 分類群 / 微生物 / ゆっくり増える菌 / 系統進化 / 生物地理 / チュニジア / サハラ砂漠 |
研究概要 |
高いレベルで新規分類群を提唱できる可能性がある「ゆっくり増える菌」(Shr3株)は、既知の菌のどれとも16S rRNA遺伝子の相同性が最大82%しかなかった好気性の細菌である。また、水田の脱窒層(嫌気層)からは、これに近縁(相同性98%)の環境細菌2種が検出されている。これらの高度新規菌3株の生理生化学的特性を明らかにして記載するとともに、その系統進化と生物地理(系統地理)に関する知見を得ることが本研究の主な目的である。 本年度は、これまでに得たShr3株の同定分類について、細胞形態や化学分類・数値分類等の一般的記載項目データ、性状試験(炭素源資化性)、DNAのGC含量等のデータ、さらに、16S rRNA遺伝子、および、他の遺伝子のシーケンスに関するバイオインフォマティクスによる検討結果を詳細に見直し、それらをもとに、最尤法・近隣結合法・最節約法の3種の系統解析の方法で分子系統綬を作成し、Shr3 がProteobacteria門に帰属する既知の菌群とは系統的に異なる新奇正の非常に高い細菌であることを再確認した。さらにShr3株について、透過電子顕微鏡(TEM:JEM-1200EX,日本電子,東京)で超薄切片法により細胞内微細構造の詳細観察も行った。Shr3株については、英国微生物菌株保存機関 NCIMB に寄託し、寄託番号 NCIMB 14846 を得た。そして、これら高度新奇菌3株の分離培養に関しては、学術論文としてまとめて発表した。(Phylogeographic analysis of filterable bacteria with special reference to Rhizobiales strains that occur at cryospheric habitats. Antarctic Science, 25, 219-228)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに得たデータと合わせて最終的には新規分類群の記載論文を書いて学術誌に投稿することを目標に掲げていたが、まずは、この高度新奇菌3株の分離培養に関して、学術誌に投稿し、受理され、現在印刷中である。新規分類群の記載論文についても、すでに原稿を書き上げ、高度新奇菌Shr3については、株英国微生物菌株保存機関 NCIMB に寄託し、寄託番号 NCIMB 14846も得ており、投稿できる段階にある。 本研究を進め、論文作成を進めるに当たり、データおよびデータ解析の高度な信頼性の確保のために、今年度も、国立遺伝学研究所のDNAデータベース(DDBJ)を利用し、さらに、英国微生物菌株保存機関NCIMBのグループ企業(株式会社テクノスルガ・ラボ)の専門家らとも、ディスカッションを重ねてきており、得られたデータは、非常に信頼性の高いものとなっている。これらは、本研究目的達成にとって非常に有効な結果を示しており、おおむね順調に「研究の目的」の達成にむけて進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で扱っている菌株Shr3は典型的な「ゆっくり増える菌」であり、かつ、また、非常に新奇性の高い菌株であることから、増殖に時間がかかること、さらに、さまざまな実験において、信頼性を高めるために、何度も再実験を行う必要があることから、投稿論文の受理までに、どのような追加データを求められるか予想できない。そのため、論文を投稿する次年度には予定以上に実験・培養を行う必要があると考え、それに備えて研究費を次年度に使用することとした。 次年度は、新規分類群の記載論文を学術誌に投稿すし、今年度よりさらに様々な環境サンプルに対し、網羅的にPCR検出を行い、追加データの取得を行う。 ただし非常に高いレベルでの新規分類群の記載論文であるため、次年度も国立遺伝学研究所のDNAデータベース(DDBJ)を利用して、さらに、英国微生物菌株保存機関NCIMBのグループ企業(株式会社テクノスルガ・ラボ)の専門家らの助力を仰ぎ、ディスカッションの場をもって、査読で要求されるであろう予想できない追加データについても対応し、本研究を推進していくつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画としては、まず、追加データ取得のための実験および解析に必要な実験用消耗品類、解析費への支出を計画している。さらに、高信頼性の追加データ取得にあたり、英国微生物菌株保存機関NCIMBのグループ企業(株式会社テクノスルガ・ラボ)等、専門家との会合を設け、細菌学的な知見を深めるため、出張も今年度同様に計画している。 また、ゲノムサイズのデータ取得とともに、様々な環境サンプルに対し、網羅的にPCR検出を行い、追加データの取得を行うため、16S rRNA遺伝子解析のみでなく、16S rRNA遺伝子以外の遺伝子の分子系統データの取得のために、遺伝子解析の外部への委託も計画している。さらに色々な環境サンプルの採集のためのサンプリング旅費、その他既存の菌株の購入費の使用も計画している。 新規分類群の記載論文の英文校閲費、投稿費等にも研究費を使用する計画である。
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