研究課題/領域番号 |
23570120
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
長谷川 英男 大分大学, 医学部, 教授 (00126442)
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研究分担者 |
浅川 滿彦 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (30184138)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 線虫類 / 齧歯類 / インドネシア / 生物地理 / 共進化 / 国際情報交流 |
研究概要 |
インドネシアのスラウェシ島、ハルマヘラ島およびジャワ島の齧歯類寄生線虫の新たな標本をインドネシア側共同研究者と共に調査し、多数の種を確認した。そのうちスラウェシ産固有ネズミ類のParuromysとTaeromysから得られた2種のSyphacia属は新種であり、既知の同島産同属固有種と頭部構造や雄側翼に共通の特徴を有し、共通祖先からスラウェシ島でネズミ類と共進化したものと考えられた。ハルマヘラ産Nippostrongylinae亜科のエタノール固定成虫について、18S rDNAおよびmtDNA Cox1遺伝子の塩基配列解析を試みたが、菌類の塩基配列に近いものが得られたものの、線虫の塩基配列は得られなかった。これは固定に用いたエタノールの組成に問題があるものと推定され、現地での採取方法あるいはDNA抽出法の改善が必要となった。比較材料としてインドネシア周辺地域の齧歯類から得たHeligmonoides cf. josephi、 Heligmonoides speciosus、 Heligmonoides ikeharai、Rattustrongylus spp.の18S rDNA領域、Cox1遺伝子の塩基配列を解析した。またスラウェシ島のParuromysから得られた一見齧歯類寄生のHeligmosomidae科所属種に類似した線虫は、詳細に観察すると独特の形態を具え、おそらくMolineidae科、特にMolineinae亜科に所属するものと思われた。この亜科の固有属にはオーストラリア区にのみ分布をするものもあり、今後DNA塩基配列からの検討が必要である。これらの線虫類のDNA塩基配列と比較検討するためEnterobius属、Riouxgolvania属、Necator属などの線虫についてもDNA塩基配列解析し、新知見を得て発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既に新種を含む多くの線虫を得て、形態的研究を進めており、論文も投稿している。周辺地域の種のDNA塩基配列解析も進んでいる。これらのことからおおむね順調に進展していると評価される。しかしインドネシアから得られる線虫類の多くは固定が不適切であり、今後はDNA塩基配列解析に適した固定条件の虫体を得ること,あるいはDNA抽出方法の改良が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでと同様に、インドネシアの研究者と共同して同国産材料の入手、特にDNA塩基配列解析に適した材料入手に務める。また現地の状況でそれらが得られない場合を想定して、ホルマリン固定材料を用い、次世代シーケンサーによって短い配列を読み、長い配列を再構成して解析する可能性も検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
経費の多くはDNA塩基配列解析にかかる機材、試薬および形態観察に要する機材購入に用いられる。また材料採取がインドネシアへ渡航して現地研究者と共同で虫体を採取したり,国際学会等で海外研究者と情報交換することも考慮したい。
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