研究課題/領域番号 |
23570120
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
長谷川 英男 大分大学, 医学部, 教授 (00126442)
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研究分担者 |
浅川 滿彦 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (30184138)
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キーワード | 線虫類 / 齧歯類 / インドネシア / 生物地理 / 共進化 / 国際情報交流 |
研究概要 |
前年度に引き続きインドネシアのスラウェシ島、ハルマヘラ島、ジャワ島、カリマンタン、フローレス島の齧歯類寄生線虫の新たな標本をインドネシア側共同研究者と調査し、多数の種を確認した。そのうちParuromys dominatorとTaeromys celebensisから得られた蟯虫はそれぞれSyphacia paruromyos、Syphacia taeromyosとして新種記載した。スラウェシ島産そのうちスラウェシ産固有ネズミ類のEropeplus canusから得た2種のSyphacia属は新種で、特異な構造を有し、既知のSyphacia属とは異なる特徴を有し、スラウェシ島のold endemic ratに寄生していた古いタイプの蟯虫を祖先とする可能性がある。またSyphacia rifaiiについてエタノール固定標本を入手し、mtDNA Cox1塩基配列を解読することができた。スラウェシ島のMargaretamys elegans、Bunomys spp.、カリマンタンのNiviventer cremoniventerからも新種を含むSyphaciaが属蟯虫が新たに検出された。一方ジャワ島産RattusのSyphacia muris、Nippostrongylus sp.、Heligmonellidae sp.のエタノール固定標本も入手してDNA塩基配列解析を試みたがエタノールの組成に問題があったらしく不調に終わった。これらの線虫類のDNA塩基配列と比較検討するためSyphacia obvelata、Aspiculuris tetraptera、Skrjbaninema kamosika、Necator spp.、Oesophagostomum spp.、Paralibypstrongylus sp.等についてもDNA塩基配列を解析し、新知見を得て一部は学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既に新種を含む多くの線虫を得て、形態的研究を進めており、論文も国際誌に発表し、さらに次の論文を準備中である。DNA塩基配列解析も進んでいる。これらのことからおおむね順調に進展していると評価される。しかしインドネシアから得られる線虫類の多くは固定が不適切であり、DNAを抽出し難い。抽出法を改良したり、細かくプライマーを設計したりしているが、長い配列は一部を除いて得られていないので、改善が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでと同様に、インドネシアの研究者と共同して同国産材料の入手、特にDNA塩基配列解析に適した材料入手に務める。またインドネシア側共同研究者は平成25年度から日本学術振興会RONPAKU研究者として来日するので、共同研究がさらに進展すると期待される。さらに世代シーケンサーによる解析の可能性も検討する。スラウェシ産のold endemic ratsは捕獲がきわめて困難であるため、米国自然史博物館に保存されている材料を調べさせてもらえるよう交渉している。
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次年度の研究費の使用計画 |
経費の多くはDNA塩基配列解析にかかる機材、試薬および形態観察に要する機材購入に用いられる。また分担者は日本学術振興会RONPAKU指導者としてインドネシアへ渡航する予定であり、材料採取・共同研究のより進展が期待される。また国際学会等で海外研究者と情報交換することも継続したい。
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