研究課題
宿主の捕獲がきわめて困難でこれまで調査ができなかったスラウェシ島のold endemic ratsについて,アメリカ自然史博物館より内臓の貸与を受けて検査したところ,新属のヘテラキス科線虫を得た。この新属はold endemic ratsの4属に検出されるので宿主特異性は弱いとみられるが,奇妙なことにnew endemic ratsには全く検出されず,後者にはHeterakis spumosaのみが寄生していた。このことはスラウェシ島の齧歯類相の形成過程と関連するものと考えられた。一方Syphacia属蟯虫は調べたold endemic ratsには全く検出できず,Heligmoneliidaeなど毛様線虫類もきわめて少なかった。しかし得られた毛様線虫は新属である可能性が高く,オーストラリア区のold endemic ratsに寄生する種との関連が注目される。連携研究者のRONPAKU研究員Kartika Dewi氏が来日し,共同でインドネシア産齧歯類から得たSyphaciaと毛様線虫類の形態およびDNA解析を行った。その結果スラウェシ島産Syphaciaはアジア大陸産種と同じ系統にあることが示唆された。またスラウェシ産固有ネズミEropeplus canusからSyphaciinae蟯虫の新属と考えられる特異な口部形態をもつ2種を発見し,さらにカリマンタン産Maxomys whiteheadiとスラウェシ島産固有ネズミMaxomys musschenbroekiiから同一のSyphacia属線虫の新種を検出した。このことはSyphaciaがnew endemic ratsと共にスンダランドからスラウェシに分散したことを示唆している。比較のためにSyphacia stroma,Necator spp., Oesophagostomum spp.等についても解析を行った。
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