研究課題/領域番号 |
23570123
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
高野 敏行 国立遺伝学研究所, 集団遺伝研究系, 研究員 (90202150)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 進化 / 遺伝学 / 共進化 / ショウジョウバエ / 遺伝子発現 / シス調節因子 / トランス調節因子 |
研究概要 |
精巣特異的に発現する遺伝子の速い進化,脆弱な精巣形成の原因解明のため,細胞内環境とともに"共進化"する遺伝子の同定とその特徴抽出を本研究は目指している.この目的のため,本年度はショウジョウバエ近縁種(D. mauritiana, D. simulans, D. sechellia)間の正逆イントログレッション系統を作出,ヘテロ接合にある2種のアレルの相対発現量比を2種の遺伝的背景で測定した.イントログレッション系統はトランスジーンによる半優性の可視マーカーを指標として,F1雑種を2種の親種それぞれに15世代,戻し交雑をすることで作出した.精巣や神経組織で高発現する遺伝子,殊にこれまでの研究結果から種間雑種で発現異常が観察された7つの遺伝子を選定,パイロシークエンスによって発現解析を行った.その結果,解析した7つの遺伝子のうち3つの遺伝子でアレルの相対発現量が遺伝的背景によって有意に異なることを見出した.この知見はこれまで考えられているよりもずっと速い速度で遺伝子発現を制御するトランス因子と遺伝子本体が協調しながら進化(共進化)していることを示している.この成果は米国科学アカデミー紀要 Proceedings of the National Academy of Sciences USAに発表した. 並行して,新たな解析材料の準備もすすめた.それぞれ1組の正逆イントログレッション系統では解析できる遺伝子が限られる.解析遺伝子を増やすため,D. simulans,D. mauritiana 間の新たな領域(2領域)のイントログレッション系統を作出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
約30万年という比較的新しく分岐した種間でも遺伝子発現を制御する細胞内環境と遺伝子本体の分子共進化がしばしば観察されるという知見は分子共進化が脆弱な精巣形成の原因と十分なりえることを示している.この意味で研究は順調に進んでいるといえる. 一方,分子共進化の蓄積(進化)の検証実験についてはさらなる検討が必要となった.より分岐の古いD. melanogaster と D. simulans (両種は約300万年前に分岐)間のイントログレッション系統については,D. simulans 遺伝子のD. melanogaster の遺伝的背景への導入系統の入手,導入遺伝子の塩基配列決定による確認作業は計画通りに進んだが,比較のための異なる遺伝的背景にある系統の作出は,交配自体ができなかったために進展できていない.方策を検討する必要がある. また,本研究代表者は平成24年2月に国立遺伝学研究所から京都工芸繊維大学へ所属機関を異動した.但し,平成24年4月までは研究員として国立遺伝学研究所の身分を残し,平成23年度の予算執行は国立遺伝学研究所で行った.異動に伴い研究活動に多少の空白期間が生ずることになった.
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今後の研究の推進方策 |
分子共進化がこれまで考えられていたよりもずっと速く進んでいることが確認できたので,次年度は解析遺伝子数を増やすことが最優先課題となる.パイロシークエンス法では1遺伝子ごとに解析を行わねばならず,研究全体の進行を律速することになる.そこでRNA-seq等による大規模な解析法についても検討する. 分子共進化の蓄積(進化)の検証実験については,前述のようにD. simulans 雌とD. melanogaster雄との交配が障害となっている.交配率が高いとの報告がある系統等を入手し,複数の交配系統を作出,交配率の向上を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度同様,塩基配列決定や発現解析のための試薬,プラスチック器具などの消耗品の購入が主要な使途となる.また,これまでの使用設備のなかには研究代表者の異動先の京都工芸繊維大学にはないものもある.成果発表と合わせ研究打ち合わせのための旅費も計上する.
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