研究課題
本研究は精巣特異的に発現する遺伝子の速い進化、進化的に脆弱な精巣形成の原因解明を目指している。この目的のため、細胞内環境とともに“共進化”する遺伝子の同定とその特徴抽出を行った。ショウジョウバエ近縁種(D. mauritiana、 D. simulans、 D. sechellia)間の正逆イントログレッション系統を作出、ヘテロ接合にある2種のアレルの相対発現量比を2種の遺伝的背景で測定した。結果として、アレルの相対発現量が遺伝的背景によって有意に異なることを見出した。この知見はこれまで考えられているよりもずっと速い速度で遺伝子発現を制御するトランス因子と発現遺伝子本体が協調しながら進化(共進化)していることを示している。この結果を受け、最終年度はキイロショウジョウバエ精巣の遺伝子発現の遺伝的変異と環境・確率要因によって生ずる変動性(ノイズ)を、トランスクリプトーム解析及びプロテオーム解析を通じてゲノム規模で解読し、以下の知見を得た。1)X染色体には高転写の遺伝子は少ない。しかし翻訳される遺伝子には染色体間のばらつきは認められない。2)転写レベルの変異量はX染色体の遺伝子で常染色体のものより小さい。3)転写量の多い遺伝子、翻訳される遺伝子ともにクラスターで存在する傾向がある。4)系統特異的に高転写、低転写の遺伝子もクラスター化する傾向がある。5)mRNAは検出できないタンパク質が存在する。以上の結果は精巣の遺伝子発現は厳格に制御されたものでなく、揺らぎを受け易いことを示唆する。
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Genetica
巻: 142 ページ: 43-48
Genetics
巻: 197 ページ: 印刷中
http://www.dgrc.kit.ac.jp/research/index.html