研究課題/領域番号 |
23570128
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
湯本 勲 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 副研究部門長 (30358303)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 藍染め / インジゴ還元 / キシラン分解 / セルロース分解 |
研究概要 |
今回申請内容の研究の目的は、インジゴ還元槽が雑菌汚染の可能性がかなり高い環境で運用していながら数ヶ月以上の長期間にわたってインジゴ還元能を維持する要因を突き止めることである。そのためにはインジゴ還元槽の安定化した期間に、インジゴ還元槽に適応したインジゴ還元能を有する微生物を特定することが重要である。そこで、長期間運用したインジゴ還元槽より分離した細菌について性質の検討を行った。その結果これまでインジゴ還元能が確認されていたC40株に加え、同じサンプルから分離されたN214株がC40株と同種に属し、インジゴ還元能を有することを確認した。これら2菌株は、植物系の高分子であるデンプン、キシラン、セルロースを分解し、L-アラビノース、D-ガラクトース、シュークロース、D-アラビノース、D-グルコース、D-フルクトース、D-マンノース、D-ラムノース、キシロース、トレハロース、セロビオース、ラフィノース、メリビオースから嫌気条件下で酸を産生したが、キシリトール、ソルビトール、トレハロース、マンニトール、myo-イノシトールからは嫌気条件下で酸を産生しなかった。生育温度域は17~39 ℃で、至適生育温度は35 ℃であった。生育pH域はpH 9.0~12.0で至適pHは10.0であった。上記の他菌体脂肪酸組成、16S rRNA遺伝子シークエンス解析およびDNA-DNA交雑その他の生理生化学的性状検査の結果、これら2菌株は新種であることが明らかになった。インジゴ還元槽は、仕込みとメンテナンス時にキシラン、セルロースを含むフスマを使用しており、生育温度および生育pH域もインジゴ還元槽の環境と一致していることから、今回提案した新種はインジゴ還元槽が、安定期に達した際にインジゴ還元機能に対して中心的な役割を担っているものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回分離し、同定した菌株はその性質であるインジゴ還元能、セルロースおよびキシランの分解能、高アルカリ条件下での生育、資化することが可能な糖の種類等を考慮すると、インジゴ還元槽の機能発現および維持に深く関与していることが、示唆されたことから、今後今回分離した菌種を中心にモニタリングおよび運用する方針を打ち出すことが、可能となったことから今後の研究展開に有用な情報を引き出すことが出来たと考えるため。
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今後の研究の推進方策 |
インジゴ還元槽の発酵の進展の度会いに応じた、インジゴ還元能およびキシランの分解能ベースの菌株のスクリーニングを推進するとともに、インジゴ還元槽の菌叢が乱れてインジゴ還元能が喪失した場合どの様な過程を経てインジゴ還元機能の喪失が進行するのかを検討する。以上の結果を踏まえ、インジゴ還元能に対して有意に機能する分離菌株の有する菌叢が乱れる原因となる菌株に対する作用について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は当初大規模なスクリーニングを予定しており、それに伴って得られる数多くの菌株に対して、16S rRNA遺伝子シークエンスを解析する予定であったが、スクリーニングの早い段階で,めぼしい菌株が得られたことから、それらに対して性状を詳しく試験することとした。よって、当初予定していた予算を消化しなかった。今年度以降は、有効性の高い菌株が得られるか否かにかかわらず、前広にスクリーニングを行う予定であることから23年度の残額および24年度の予算の大部分を使用する予定である。
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