研究課題/領域番号 |
23570128
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
湯本 勲 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 副研究部門長 (30358303)
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キーワード | 藍染め / インジゴ / Amphibacillus / Oceanobacillus |
研究概要 |
インジゴ還元槽より、インジゴ還元菌C40株およびN214株を分離し、新種細菌Amphibacillus indicireducensとして発表を行った。インジゴ還元槽より、さらにインジゴ還元細菌の探索を行った結果、新たにN314株を分離した。同菌株について分類学的検討を行った結果、16S rRNA遺伝子塩基配列の相同性において、A. indicireducens C40株と98.8%の高い相同性を示し、これまでに知られている細菌種の中でC40株と最も高い相同性を示した。同菌株が新種か否かをC40株を用いてDNA-DNA相同性を検討した結果、29%の相同性を示し、同菌株が新種(<70%は新種)であることが示された。本菌株はA. indicireducensと非常に良く類似しており、異なる性質は、N314株がエステラーゼおよびα-ガラクトシダーゼ活性が無いことと、生育温度レンジにおいて、A. indicireducens が17-39 °Cなのに対し、N314株は26-39 °Cと狭い温度範囲であった。これまでに報告されたことをベースに考察すると、インジゴ還元菌には主にAlkalibacterium属とAmphibacillus属のものがおり、それぞれの属内で少しずつ性質の異なった複数の種の細菌が存在する事が言える。この様な複数種のインジゴ還元細菌間で、少しずつ性質の異なった種が複数存在することが、種々の環境変化に対し緩衝能を示すことによって、外部からの雑菌汚染等にも対抗する手段の一つになっていることが推察される。 一方、新たなインジゴ還元菌をスクリーニングした結果、Oceanobacillus 属の菌株A21株を見出す事が出来た。分類学的検討の結果、本菌株は新種細菌であることが判明し、Oceanobacillus indicireducensとして発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で、ある一定の条件下でインジゴ還元槽においてインジゴ還元能を示す優先種を分離し、同定出来ているものと考えられる。これまでの研究で、インジゴ還元菌であるAlkalibacterium属細菌は乳酸産生能があることが報告されているが、それ以外の乳酸産生細菌について探索を行っており、いくつか乳酸産生能に優れた菌株の取得に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの培養を介さない遺伝子解析によりインジゴ還元槽の細菌叢の解析結果を踏まえ貧栄養条件や特別な基質を加えたり、絶対嫌気条件下で培養するなどを検討することによって、より網羅的な分離条件の検討を行う。それらの分離菌について、インジゴ還元能、乳酸産生能、他の細菌種を駆逐する能力の有無について検討する。またインジゴ還元槽は通常6~8ヶ月の間機能を維持しているが、より長期間機能を維持しているインジゴ還元槽の細菌叢の解析を行い、その長期維持安定能の要因を追究する。また、同インジゴ還元槽の細菌叢においてインジゴ還元能が喪失した直後の細菌叢についても検討を行い、還元能喪失と細菌叢の変化の関係を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの検討で、好気的に培養可能なインジゴ還元菌の分離についてはかなりの進展があったが、絶対嫌気性菌の解析は未だ不十分であると考えられる。絶対嫌気性細菌の分離に加え、特別な条件でのみ分離が可能な細菌の分離も検討を予定している。また菌叢が崩壊し、インジゴ還元能を示さなくなった直後のインジゴ還元槽の菌槽解析や、インジゴを資化する細菌のスクリーニングも予定しており、検討事項が多いので、前年度までの残余予算と平成25年の予算を合わせて全て使用し、研究を完結する。
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