研究課題/領域番号 |
23570129
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研究機関 | 滋賀県立琵琶湖博物館 |
研究代表者 |
桝永 一宏 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 主任学芸員 (50344346)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 生物地理 / 起源 / 分散 / 多様性 / 南米大陸 |
研究概要 |
海洋性双翅目昆虫が、淡水から海水へ進出した起源地の可能性のある南米大陸に焦点を絞り、本グループの起源地、分散経路、種分化、多様性について解明することが目的である。全球レベルでの海洋性双翅目昆虫の分散と進化について解明する過程で、南米大陸とインド洋周辺が未調査であり、分散経路を推定する上で欠かせない地域である南米を対象とした。今年度は、南半球に広域分布し、南米大陸からも記録されているアシナガバエ科のCymatopus属について検討し、原著論文1本を出版した。本論文では、マリアナ諸島に分布する本属の2新種について、それぞれCymatopus femoralisとC. ventralisとして記載し、世界には21種が記録されていることを明らかにした。さらに本論文では本属の全21種についての検索表を作成した。このうち、マダガスカル島、オーストラリア、パナマ、ガラパゴス諸島に分布する6種については別属とすることも検討したが、標本を持っていない種もあり、来年度の調査で標本を入手してから再検討することとした。また、他の研究費でロンドンの大英自然史博物館に滞在し、収蔵されている世界のアシナガバエの標本を調査した。本研究に必要な標本については写真撮影を行い、標本ラベルの採集地や採集日などの情報を入手した。特に、標本を観察したことがなかった、南半球に分布するAphrosylopsis属について標本を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、南半球に広域分布し、南米大陸からも記録されているアシナガバエ科のCymatopus属について検討し、原著論文1本を出版することができた。また、ロンドンの大英自然史博物館に滞在し、収蔵されている世界のアシナガバエの標本を調査することができたため、今後の研究に有用な情報を入手することが出来た。現時点での研究の進展具合はおおむね順調だと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、南米大陸での現地調査を行い、分布調査と標本の収集を行う。南半球に生息するアシナガバエの最盛期である2013年1月から2月にかけて40日程度の調査を計画している。この時期に調査を行えば、その地域に分布しているほぼ全ての種について採集が行えると考えている。得られた標本のDNAを抽出して、順次、塩基配列を解析していく。未記載種が発見されたときは、記載し命名を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の現地調査は、南米大陸の西岸に位置するエクアドル、ペルー、チリを予定している。現地調査にかかる旅費が多く使われる予定であるが、これは南米と日本間の渡航費用を節約するために、前年度に予定していた調査を次年度にまとめたためである。また、調査に必要な採集道具や保存用のエタノール、DNA解析に必要な試薬なども購入する予定である。
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