研究課題/領域番号 |
23570129
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研究機関 | 滋賀県立琵琶湖博物館 |
研究代表者 |
桝永 一宏 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 専門学芸員 (50344346)
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キーワード | 国際情報交換 / ブラジル / アルゼンチン / エクアドル |
研究概要 |
海洋性双翅目昆虫が、淡水から海水へ進出した起源地の可能性のある南米大陸に焦点を絞り、本グループの起源地、分散経路、種分化、多様性について解明することが目的である。全球レベルでの海洋性双翅目昆虫の分散と進化について解明する過程で、南米大陸とインド洋周辺が未調査であり、分散経路を推定する上で欠かせない地域である南米を対象とした。今年度は、2013年1月17日から2月22日の間、チリ、エクアドル、フランス領ギアナ、グアドループ、キーウェストにおいて採集と分布調査を行った。今回の調査により、いくつか新たな知見が得られた。1)日本(東海地方以北)に分布するキタイソアシナガバエConchopus borealisがチリから見つかった。本種は、北米の太平洋岸とパナマ海峡を越えたアラバマ州からも発見されており、日本から移入した種であると推測されている(Masunaga et al., 1999)。2006年には南米ペルーで採集された報告があり(Brooks & Cumming, 2009)、今回の発見は最南端の記録となった。本種は、今回の調査地域のうち1カ所のみで見つかり、発生地での個体数も少なく、まだ定着し始めの段階と思われる。今後、DNAを解析して、日本のどの地域のものと近縁なのかを調べる予定である。2)チリでは海浜性のアシナガバエは前述のキタイソアシナガバエしか採集されなかった。寒流であるフンボルト(ペルー)海流の影響が考えられる。淡水から汽水域に分布するミナモアシナガバエ属Hydrophorusは採集された。3)エクアドル、仏領ギアナ、グアドループ、キーウェストでは、熱帯から亜熱帯域にかけて分布しているミナミイソアシナガバエ属Cymatopusが少なくとも7種採集され、そのうち6種は新種であった。4)この他にも、エクアドルでは、カニの穴に住むAsydentus属の種も採集された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、南米大陸のチリ、エクアドル、フランス領ガイアナを中心に分布調査と採集を行った。平成25年度の調査は、ガラパゴス諸島、ブラジル、アルゼンチンを予定している。この調査が終われば、南米大陸での分布状況がほぼ把握できると考えており、現時点での研究の進展具合はおおむね順調だと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、南米大陸での現地調査を行い、分布調査と標本の収集を行う。ガラパゴス諸島、ブラジル、アルゼンチンにおいて、アシナガバエの最盛期である2014年1月から2月にかけて40日程度の調査を計画している。この時期に調査を行えば、その地域に分布しているほぼ全ての種について採集が行えると考えている。得られた標本のDNAを抽出して、順次、塩基配列を解析していく。未記載種が発見されたときは、記載し命名を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の現地調査は、南米大陸のガラパゴス諸島、ブラジル、アルゼンチンを予定している。この現地調査にかかる旅費が多く使われる予定である。また、調査に必要な採集道具や保存用のエタノール、DNA解析に必要な試薬なども購入する予定である。
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