研究概要 |
本研究は、アフリカ睡眠病の薬剤標的タンパク質であるトリパノソーマのシアン耐性酸化酵素(TAO)の結晶構造、及びTAOと薬剤のリード化合物である阻害剤との複合体の結晶構造を明らかにすることによって、実用的な薬剤候補となる阻害剤の開発を目的としている。TAOは膜表在型の二核鉄を有するユニークな特徴をもつタンパク質であり、これまでに構造解析の例はない。以下に、本年度及び研究期間全体の成果を示す。 ・研究期間全体を通じて、TAOの酸化型、TAOとアスコフラノン誘導体であるAF2779OHとの複合体及び別のアフコフラノン誘導体であるコレトクロリンBとの複合体の結晶構造をそれぞれ2.85, 2.6, 2.3Å分解能で結晶構造を決定し、それらの成果をまとめて論文にすることができた(Shiba T et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2013, 110, 4580)。これは、膜表在型の二核鉄タンパク質の構造としては初めての報告である。また、AF2779OHは、トリパノソーマに感染させたマウスを完全に治癒することを確認しているので、実用的な薬剤開発を進める上での重要な成果である。 ・TAOの結晶構造が明らかになったので、シアン耐性酸化酵素の構造と機能についての総説をまとめることができた(Moore AL, Shiba T et al., Annu. Rev. Plant Biol.,2013, 64, 637 and Young L, Shiba T et al., Biochem Soc Trans. 41, 1305-1311 (2013))。
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