研究課題
ポリシアル酸は脳に局在するユニークな生理活性糖鎖であり、これまでその巨大な排除体積による反接着作用のみが考えられてきた。我々は近年ポリシアル酸が、脳に存在する種々の神経作用因子、脳由来神経栄養因子(BDNF)や神経伝達物質(ドーパミン)と特異的に結合し複合体を形成すること、それらの細胞外濃度を制御することにより細胞内へのシグナル伝達を変化させることを明らかにしてきた。本研究では、特に神経作用因子の中でも増殖因子FGF2に焦点をあて、そのポリシアル酸との複合体の性質を詳細に検証すること、FGF受容体(FGFR)との三者会合体の可能性をさぐること、細胞増殖やそのシグナル伝達に及ぼす影響を明らかにすることが目的である。本年度は昨年度に確立した方法を用いて、ポリシアル酸とFGF2の結合性を、脳に共局在するヘパラン硫酸とFGF2の結合性と比較することにより、より詳細に解析した。その結果、ポリシアル酸とFGF2の結合性は、ヘパラン硫酸とFGF2との結合性と全く異なり、複合体がより大きいこと、受容体と三者会合体を作らないこと、ポリシアル酸-FGF2複合体からFGFは移動できるが、HSーFGF2複合体からFGF2は移動できないこと、FGF2の各酸性多糖に対する結合サイトが異なることなどが新たに明らかになった。また、細胞におけるFGF2の効果について、NIH-3T3細胞を用いた結果から、ポリシアル酸は生存よりもむしろ増殖に関与することが明らかになった。
1: 当初の計画以上に進展している
ポリシアル酸のFGF2保持機能をHSのFGF2保持機能と比較検討を行い、その違いを発見できた。また、統合失調症由来の酵素を用いたポリシアル酸鎖の解析も終了したため。
今後、計画にあった統合失調症患者由来のポリシアル酸転移酵素由来のポリシアル酸をもつNCAMを用いた機能解析や、抗体を用いたポリシアル酸鎖の検出法の解析を進める。
次年度も計画に従って遂行する予定である。
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