研究課題/領域番号 |
23570135
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中井 忠志 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (00333344)
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研究分担者 |
谷澤 克行 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (20133134)
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キーワード | 翻訳後修飾 / 補酵素の生合成 / 結晶構造解析 / キノヘムプロテイン / ビルトイン型キノン補酵素 / ラジカル・SAMタンパク質 / 分子内チオエーテル架橋 / 酵素解媒機構 |
研究概要 |
本研究では、タンパク質の翻訳後修飾反応により形成される新規ビルトイン型キノン補酵素、システイントリプトフィルキノン(CTQ)を含むキノヘムプロテイン・アミン脱水素酵素(QHNDH)を対象として、シグナル配列の切断から、CTQや分子内架橋構造の形成、ヘムの挿入、ヘテロ三量体形成に至る多段階の翻訳後修飾反応によるQHNDHの生合成プロセスの解明を目指している。本年度の研究の成果を以下に示す。①ORF2タンパク質を嫌気条件で調製し、試験管内で短縮型γサブユニットの架橋形成反応を進行させ、新規に開発した蛍光標識法により定量的に活性を測定した。さらに、全長のγサブユニットとその種々の変異体を用い、γサブユニットへの架橋反応がN末端側から順番に進行することを明らかにした。②前年度までに遺伝子破壊法によりORF6, ORF7, ORF8のQHNDH生合成への必須性の検討と生化学的な解析を行い、ORF6とORF7については必須であることを明らかにしたが、ORF8については必須ではないという結果が得られていた。しかし、今回、実験条件の再検討を行ったところ、ORF8遺伝子の破壊によりQHNDHのCTQ補酵素が生成されなくなることが判明した。この実験結果とORF8のアミノ酸配列の比較から、本遺伝子産物がCTQの前駆体であるトリプトファン残基に酸素を添加するFAD依存性のモノオキシゲナーゼであることが推定された。以上の成果のうち、①は日本生化学会において口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要の①については、現在のところ結晶が得られていないため申請書にある立体構造解析までは至っていないものの、生化学的な解析により当初の予定よりも詳細な活性測定が可能となり、架橋形成反応がN末端側から順番に生じることまで明らかにできた。②については、申請書の内容を全て達成し、QHNDHの生合成に必要と予測されていた遺伝子をすべて特定することに成功した。以上の成果を総合すると、「おおむね順調に進展している」として、申し分ないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ラジカルSAMファミリーORF2タンパク質の結晶構造解析:ORF2タンパク質の原子レベルでの反応機構解明を目指して、γサブユニットとの複合体を含むORF2タンパク質の結晶化を試みる。精製などと同様に嫌気チャンバー内で、結晶化から液体窒素への凍結保存まで行う。X線回折測定可能なサイズの結晶が生成した場合には、データ収集を行い、結晶構造を決定する。位相決定は、鉄硫黄クラスター中の鉄原子の異常分散により、容易に行えるものと期待される。最終的に、ORF2の機能解析の研究結果も総合し、鉄硫黄クラスターが関与するチオエーテル架橋形成機構の詳細を解明する。 (2)ORF6, ORF7及びORF8の機能解析:QHNDH生合成に必須であることが新たに判明したこれらの遺伝子産物の生化学的解析をそれぞれ進める。部位特異的変異導入による機能に重要な残基の同定のほか、ORF8ではその酵素としての性質、ORF6では輸送すると考えられるγサブユニット前駆体との相互作用、ORF7では誘導物質と予想されるブチルアミンやプロモーター領域を含むDNAとの相互作用について機能解析を進める。 (3)試験管内反応系を用いたCTQ補酵素およびQHNDH生合成の再現:これまで構築に成功しているγサブユニット前駆体とORF2の試験管内反応系に、ORF5タンパク質を加えることで、次のステップのγサブユニット前駆体(3本のチオエーテル架橋をもち、リーダー配列はもたない)が得られるか検討する。さらに、この試験管内反応系に、単独で発現精製したαサブユニットを加え、CTQ生成におけるαサブユニット依存性を調べる。このようにして、全ての翻訳後修飾反応を試験管内で再現することで、活性をもつQHNDHの生成を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は申請書にて計上した通り、主に消耗品の購入に使用する予定である。具体的には、以下の通りである。 (1)消耗品等: 酵素の精製および結晶化、部位特異的変異導入等の遺伝子操作に必要な試薬類、培養用プレート・フラスコやピペットチップ等のディスポーザブルプラスチック器具・ガラス器具等の消耗品の購入を予定している。 (2)国内旅費: 国内旅費としてX線回折データの取得のためのSPring-8への出張旅費、国内及び国際学会発表のための旅費への予算の使用を予定している。 (3)その他: 欧文学術雑誌への投稿に必要な研究成果投稿料に使用する。
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