研究概要 |
本研究では、タンパク質の翻訳後修飾反応により形成される新規ビルトイン型キノン補酵素・システイントリプトフィルキノン(CTQ)を含むキノヘムプロテイン・アミン脱水素酵素(QHNDH)を対象として、シグナル配列の切断から、CTQや分子内架橋構造の形成、ヘムの挿入、ヘテロ三量体形成に至る多段階の翻訳後修飾反応によるQHNDHの生合成プロセスの解明を目指している。前年度までに遺伝子破壊法により新たに3種類の遺伝子(qhpFGR)がQHNDH生合成に必須であることを明らかにしたが、今年度はそれらの遺伝子の生化学的な解析を行い、複雑な生合成プロセスが次のように進行することを支持する結果が得られた。①ブチルアミン存在下で転写因子QhpRがqhpADCBEFオペロンとqhpGの転写を活性化する。②QhpA, -D, -C, -B, -E, -F, -Gが発現する。③γサブユニット(QhpC)内の3本のチオエーテル架橋がラジカルSAM酵素QhpDにより形成される。④FAD依存性モノオキシゲナーゼQhpGがQhpCのCTQ前駆体のTrp残基をヒドロキシル化する。⑤QhpCの28残基のリーダー配列がQhpEプロテアーゼにより切除される。⑥αβサブユニット(QhpAB)がSecまたはTat経路により、QhpCがABCトランスポーターQhpFによりペリプラズムに輸送される。⑦ヘムがQhpA内に挿入される。⑧QHNDH3量体(QhpABC)が形成され、QhpAのヘム依存型のペルオキシダーゼ活性によりCTQが完成する。また、これらのqhp遺伝子はデータベース解析により、広範囲の細菌に分布し、大部分はグラム陰性菌であるが一部のグラム陽性菌にも存在することが判明した。以上の結果については誌上発表を行った(Nakai et al., Biochemistry 53, 895-907 (2014))。
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