研究課題/領域番号 |
23570141
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
湯澤 聡 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (40515029)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞極性の形成 / シグナル伝達 / X線結晶構造解析 / LGN |
研究概要 |
細胞極性の形成過程において,LGNはパートナー分子との相互作用により細胞内の局在と複合体の形成が制御されている. Inscutebale (mInsc)はLGNのN末端側TPRモチーフを含む領域と相互作用するが,他にも紡錘体の形成と機能の制御に関与するタンパク質NuMAやLGN自身のC末端領域もこの領域へ結合するパートナーとして知られている. LGNとパートナー分子複合体の詳細な分子機構を明らかにするために,当該年度はmInscとLGNとの複合体の立体構造について検討した.先行課題に引き続き,mInsc-LGN複合体タンパク質を発現・精製・結晶化し,X線回折実験を行った.回折強度データの収集は, 高エネルギー加速器研究機構 フォトンファクトリーのBL-17Aビームラインで行った.アミノ酸の相同性の高い既知のTPRドメインの座標をサーチモデルとして分子置換法により,mInsc-LGN複合体の結晶構造を2.6オングストローム分解能で決定した.複合体の中でmInscのLGN結合領域は,αヘリックスとβシートが伸長領域で連結された特徴的な構造を持ち,全体で伸びた棒状の構造を示していた.一方,LGN TPRドメインは8つのTPRモチーフが一続きの右巻きスーパーヘリクスを形成し,LGN TPRドメインの凹面全体でmInscを包むように相互作用することが構造解析から明らかになった.さらに,立体構造の情報に基づいて,mInscとLGNについて変異体を作成し相互作用解析を行い,mInsc-LGN複合体形成において重要な残基を特定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞極性の形成過程において,LGNとそのパートナー分子からなる複合体が重要な役割を果たしていることが明らかになってきた. LGNはパートナー分子との相互作用により細胞内の局在と複合体の形成過程が制御されている.本研究では,細胞極性を制御するタンパク質LGNがもつ分子間・分子内相互作用を介した多段階の活性制御機構を立体構造に基づいて明らかにすることで,細胞の極性形成の機序を解明することを目的としている.当該年度は,LGNとInscuteable複合体の立体構造決定に成功し,関連研究と共に論文発表した.研究計画に従い当該課題はおおむね順調に進展しているものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従い,当該課題を推進する予定である.具体的には,引き続き,LGNとInscとの相互作用を破壊する変異体の作成と機能解析を行う.また,自己阻害状態のLGNのX線結晶構造解析,自己阻害状態を解除するLGNの変異体の作成と機能解析,そして,自己阻害状態LGNのパートナー分子による活性制御機構の解析を推進する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画に従い,研究費を使用する予定である.具体的には,タンパク質の生産,結晶化,生化学実験,タンパク質間相互作用解析を行うため,一般試薬,酵素,DNA合成,結晶化試薬,プラスチック器具の購入に充当するとともに,研究成果を発表し議論するための学会出席・発表に必要な旅費と論文発表に必要な研究成果投稿料に研究費を使用する予定である.
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